引き続きこちらの記事をとりあげます。
今日は、「ランキング」と「学部レベルでの研究の限界」です。
ランキング(序列)信仰
実際、英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤーエデュケーション(THE)」が出した「世界大学ランキング2021年版」を見ると、国内大学より海外大学に進学した方がいいように思えてくる。ランキング上位10大学は米英の大学が占め、アジアのトップは20位に入った中国の清華大学だ。
人間は序列をつけることが大好きです。なぜなら、他社との関わりの中で生きているから。
そして、ランキングが上がったり下がったりすることに一喜一憂するわけです。
大学ランキングもTHE以外にもQSなど様々なものがありますが、これらのランキングでは北米や欧州の大学が上位を占めています。
ただ、ランキングを見る場合には、総合順位だけでなくランキング算出のMethodology(方法論)にも少し注意した方が良いでしょう。
例えば、先ごろ発表されたThe QS World University Rankings 2022では、6つの指標(①Academic Reputation ②Employer Reputation ③Faculty/Student Ratio ④Citations per faculty ⑤International Faculty Ratio ⑥International Student Ratio)によってランク付けされています。
ランキングでは、MITが1位で東大は23位ですが、指標の中にある”Academic Reputation”(学術関係者の評判)という指標で東大は100点満点(満点は全部で8校)となっています。
一方、”International Faculty Ratio”(外国教員比率)では10.7(MITは満点の100)、International Student ratio(外国学生比率)が26.1(MITは91.9)と、この辺りの指標が低くなっています。これらの評価指標はウェイト付けが各5%と低いものの、この2つの指標が低いことが(ランキングの)背景にあることも知っておいてもよいかもしれません。
ランキング自体は参考情報に過ぎませんが、(ランクの高低だけでなく)ランキングのmethodology(方法論)を考察してみる必要もあると思います。
例えば、将来研究したい領域が明確に決まっているのなら、分野別(Subject別)のランキングなども参考になるかもしれません。
学部レベルでの研究の限界
「教育レベル」「研究開発」「就職」で、三方良しの海外大学。しかしながら、徳島の女子高生のように、高校を卒業していきなり米ハーバードや英オックスフォードといった超名門大学に入れる学生は一握りにすぎない。
大学学部レベルでは、一般教養や専門科目の基礎を学ぶという準備作業にかなりの時間を使います。
また、海外経験がある程度ある帰国子女を別にすると、純ジャパで(TOEFLやSATで一定基準点を取って)入学を認められたたからといって、大学の授業に問題なくついていけるかと言えば、そんなことはない。
現地に行けば、英語力は底辺レベルになります。よって、当初は授業についていくのはかなりしんどいと思います。
また、米国大学で勉強する内容と日本の大学で学ぶ内容が180°違うということはありません。むしろかなり近似しているでしょう。
どうしても米国の大学で学ぶ内容が気になるのであれば、実際に米国大学で使っている教科書をAmazonで買って読めばよい。シラバスを見ればどんな教材を使っているのか分かるので。
本格的に何かを研究するなら大学院レベル、それも修士課程よりも博士課程です。
(ちなみにMBAは修士ですが、何かを研究する場ではなく「就職予備課程」です。)
つまり、海外大学の高い研究レベルの恩恵を受けたいのであれば、博士課程(少なくとも修士課程)に行かないとほとんど意味がないということです。