本日の記事はこちら↓ 読み応えのある記事です。
ゴールまでの3年間を俯瞰する
ずばり、中学受験を成功させる秘訣は、親が俯瞰の目を持つことだ。(中略)わが子に中学受験をさせるのであれば、親はその準備期間にあたる3年間が、どのような構成になっているのか、きちんと把握しておくべきだ。ロードマップにたとえてみるといい。スタート地点から3年後のゴール地点までどんな道を進むのか。途中、大きな山や走りにくい道はないか。走りにくそうな道があったら、回避するべきか。事前に心構えをしておき、頑張って越えてみるか。
第1子の中学受験の場合、親も初めての経験。どうしても目の前のことが気になり過ぎて近視眼的になりがちです。
そこで、実際に入試を迎えるまでの全体スケジュール、勉強の山場や躓きやすいポイントなどをあらかじめ知っておけば、慌てずに対処できます。
4年生の学習
中学受験における4年生の学習ポイントは、学習習慣を身に付けることと、基礎を固めることだ。低学年のうちからすでに受験を意識してきた家庭は、学習習慣を身に付けるという点はすでにできているかもしれない。だが、そういう家庭は先走る傾向があり、すでに子どもにあれこれやらせ過ぎているケースが多い。
(中略)
4年生の勉強は、学習の量を増やすことではなく、納得して覚え、きちんと分かった状態で解くことだ。そこさえ押さえておけば、あとは遊んでいていい。むしろ、その遊びがのちのち勉強につながっていくこともある。
4年生の塾の学習というのは、量質ともに余裕があります。
その結果、何となく「物足りなさ」を感じて、色々余計なモノ(不必要に難しい応用問題など)をやらせてしまいがちです。塾の試験などでは小4段階からかなり難しい問題が出るわけですが、そうした問題にも「対応しなくては」と考えがちです。我家も、今から思えば無駄に難しい問題に手を出してしまったと反省しています。 🙂
というのも、小4段階で解けるような応用・発展問題は、小5や小6になればもっと簡単に解けるようになるからです。
実際、入試レベルの応用問題は、様々な論点が組み合わされている問題が多いのですが、前提として、「解くための武器」を身につけていないといけない。「解くための武器」を身につけるのが、小4~小5の単元学習の目標となるわけです。
言い換えると、「解くための武器」をしっかり身につけてから、これらを駆使して問題を解く練習(=本格的な入試レベルの問題演習)に取り組んでも決して遅くはないということです。
5年生の学習
中学受験で押さえておくべき単元は、5年生で一通り学習し終える。それは、すなわち5年生の勉強は猛スピードで進んでいくことを意味する。5年生の学習は、学習量が増え、授業の進度が速まるだけでない。学習する内容が高度化していく。特に小学生の子供が苦手とするのが、算数の割合と比の学習だ。
多くの塾では、5年生の6月に割合を、夏休みに比を学習する。これらの単元は抽象的な概念の理解が必要になるため、小学生の子供には難しく感じ、「中学受験の壁」とも言われている。だが、それも事前に知っていれば、慌てることはない。
小5の算数の学習は中学受験の大きな山場となります。特に、5年後半は「比」を使った単元学習が連続するので、かなり大変です。
また、小5前半も(抽象度は「比」ほど高くないものの)割合を使った単元(売買損益、食塩水の濃度)や速さが本格化します。
これらの単元には必須概念(例えば、売買損益であれば、「仕入値」、「定価」、「売値」、「値引き」等)があり、これらの概念が分からないと、そもそも問題を解くことができません。
大人であれば当たり前のことであっても、子供にとっては概念に慣れるまで時間がかかります。
そこで、余裕がある小4生の場合には、(難しい問題を解くよりは)① 買い物に一緒に行ったり(=売買損益)、②家庭で食塩水を実際に作ってみたり(=食塩水)、③速さや距離を経験(=速さ)することの方が、後々の学習に役に立つと思うのです。
言い換えると、小5で学ぶ内容について、概念が実感できるようになるまで、経験値を高めておくことが重要だと思うのです。
また、技術的には割り算や分数計算を多用するので、基礎的な計算を素早く正確に行う訓練をしておく必要もあります。
6年生(前半)の学習
最後に6年生の学習だ。1学期はこれまで学習したことの総復習を行う。そして、夏以降は演習が中心となる。これまで学んできたことの再現性を高めていく学習に変わる。
小6の前半は、(小4~小5で学んできた)単元学習の総復習となります。
小4・小5では、数週間に1回「組分けテスト」があると思いますが、小6になると毎週「組分けテスト」以上の広い分野の復習をするという感じです。
復習段階では、忘れている単元や手薄な単元も出てくると思いますが、それ自体、別に嘆くようなことではありません。
ここで重要なのは、「短時間の復習で思い出せるレベルまで、単元学習段階で理解しておく」ということです。「忘れていること」があっても、短時間の復習で思い出せれば、その週の復習でさらに理解を深めていくことができます。また、(その週で学習する)他の単元とも関連付けることができるので、理解の幅が広がり、深い理解に結びつきます。
一方、「理解があやふやで、もう一度最初から理解し直す」となると話は別です。これは相当時間がかかってしまいます。
繰り返しになりますが、(小4~小5で学んだ)単元学習の内容を忘れることには問題ありません。基礎的事項をしっかり理解(=実感を伴った理解)していれば、すぐに思い出せるからです。
もちろん、単元学習段階でしっかり理解した上で、(忘れようがないほど)繰り返しトレーニングを積んでおけば理想的ですが、これは相当の上位層の話です。
しかし、「式を覚えるだけ」とか「やり方を覚えるだけ」に留まっている勉強は、かなり危うい。この場合には、もう一度理解し直さないといけないからです。
(大手塾の)小6(前半)のカリキュラムは、一から理解していくような余裕を持った前提では組まれていません。
なので、仮に小6段階で理解があやふやな単元が数多く残っているようならば、大手塾のカリキュラムとは別の方法でキャッチアップする必要があると思います。
「全落ち」は回避する
すでに受験を目前に控えている受験生は、とにかく今は合格平均点に近づく努力をすること。それが難しそうなら、第一志望校は思い切りチャレンジしてもいいから、第二、第三志望校に現実味のある学校を選択しておくことだ。
「ダメなら公立でいい」という親は少なからずいる。特に父親にその傾向がある。しかし、私は全落ちだけは避けるべきだと考える。中学受験で挫折感が残ると、中学に入ってから反抗期も始まって、親子の関係が悪くなったり、勉強嫌いになったりするケースが非常に多いからだ。
「全落ちは避けるべき」 まったく同感です。
結果的に公立中学に進むにしても、「一つも合格しない場合」と「(私立に)受かっても行かない場合」とでは、気持ちの上で大きな差があると思うのです。
そして、「全落ち」に至る大方のケースは、併願戦略の失敗ーすなわち親の責任ーという要因が大きい。
もっとも拙い併願戦略は、(各学校の出題傾向も吟味せずに)「偏差値順に受ける」受け方です。
塾における偏差値は確かに受験には役立つ指標です。しかし、塾での3年間で「偏差値序列主義」的価値観にすっかり毒されてしまうと、結果として、こうした稚拙な併願戦略を採用してしまう危険性もあります。
例えば、似たような偏差地帯の学校でも出題傾向がまるで違うケースは多々あります。この辺を考慮せずに併願戦略を組むと、(対策に時間がかかってしまい)お子さんに過剰な負荷を与えたり、あるいは準備期間が足りなくなって準備不足に陥ることになりかねません。
逆に出題傾向が似ている学校ならば、1~2年分の過去問を解くだけでも十分な準備になることもある。場合によっては、(問題を解かずに)前日に過去問に目を通しておくだけでも十分だったりします。
もちろん、綿密な受験戦略を組んでも「全落ち」ということもあるでしょう。これは親としてやるべきことをした結果なので、仕方がないことです。
仮に「全落ち」したとしても、長い人生で見れば大したことではありません。気持ちを切り替えて中学での新生活に臨むこと、そして充実した学校生活を送ることの方が大切です。