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「先取り教育」だけが大学合格実績を上げるのではない
中高一貫校の大学進学実績がいい理由は、中学生のうちに高校の範囲まで踏み込んで学んでしまういわゆる「先取り教育」にあるといわれることがよくあります。でもそれは、半分正しくて、半分間違っています。
たいへん興味深いデータがあります。10校ある都立中高一貫校のうち「併設型」と呼ばれる5校は中学からも高校からも生徒を募集していますが、東京都教育委員会の都立中高一貫教育校検証委員会の報告によると、都立中高一貫校における中学からの入学者(内進生)と高校からの入学者(外進生)の進学実績を比べると、内進生のほうが圧倒的に良かったことがわかっているのです。
東京都内の「併設型」と言われる都立中高一貫校は5校ありますが、いずれも高校募集を停止済、または停止予定となっています。
2022年度で高校募集があるのは白鷗高校だけで、2023年度以降は都内の「併設型」は姿を消します。
学校名 | 高校募集停止年度 |
武蔵高校・附属中学校 | 2021年度入学生から |
富士高校・附属中学校 | 2021年度入学生から |
両国高校・附属中学校 | 2022年度入学生から |
大泉高校・附属中学校 | 2022年度入学生から |
白鷗高校・附属中学校 | 2023年度入学生から |
高校受験があることが日本の教育の問題点か?
たしかに私立の中高一貫校では、生徒たちの学力レベルに合わせて授業を進めることで結果的に先取り教育に見える教育を行ってはいます。高校受験対策に時間を取られることもないため、たいがいの私立中高一貫校では高2までに高校までの履修範囲を終え、高3の1年間を大学受験対策に丸々あてることができます。これが大学受験に有利でないはずはありません。その意味で、先ほどの言説の半分は正しい。でもそれだけでは説明として不十分です。
中学受験の勉強をしてきた生徒のレベルに合わせた授業を行うことで、(中学生の間も)公立中学より進度は早くなります。
また、高校受験勉強をしなくて良いので、その時間を高校での勉強内容に充てられます。
結果、(学校や科目による進度の差は多少あるでしょうが)大学受験において1年位のアドバンテージが生じるということでしょうか。
このことは、私が中学・高校生だった(遥か昔の)時代でも基本的に変わらなかったと思います。
つまり、高校受験の1浪と中高一貫校の現役組が同じ状況という感じでしょうか。今はこうした状況がより鮮明になっている印象を受けます。
さらに、東京都の報告書にあるように、高校受験がないという時間的・精神的ゆとりが学力向上にも寄与していると考えられます。特に暗記だけでは対抗できない難関大学入試を突破するような高い学力を身につけるうえでは、実際の受験勉強以前に学力的な土台あるいは器のようなものをどれだけ広げておくかがものをいいます。
もちろん、中高一貫校の6年間は大学受験のためだけにあるわけではありません。クラブ活動や学校行事、友人や先生との交流など、充実した学校生活を送ることも非常に大切です。
また、勉強面でも早くから(大学受験に向けて)塾通いとかをするよりも、(一見すると受験には役に立たないように思える)幅の広い勉強、好きな勉強をすることもできます。例えば、古典、漢詩、哲学、歴史、高度な数学や物理学など、興味のおもむくままに思いっきり勉強することもできます。
小学校の6年間と中学・高校の6年間を併せて12年間と考えた場合、中学受験というのはちょうど中間地点になるわけで、「(中学受験を境に)前半6年、後半6年という刻みの方が自然かな」と考えたことも、我家が中学受験をさせた一つの理由でもあります。