中高一貫校と英語の教科書

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ちょうど1年ほど前、中高一貫校と体系数学という記事を書きました。

意外にアクセス数があるようなので、今回は「中高一貫校と英語の教科書」という題目で記事を書きたいと思います。

中高一貫校の代表的英語教材は?

NEW TREASURE(Z会)

中高一貫校で使われる英語教科書(検定外教科書)として有名なℤ会の『NEW TREASURE』

学年別の教材ではなく、Stage1からStage5の5冊から成り、Stage1とStage2が中学レベル、Stage3が中学の復習と高校基礎レベル、Stage4が高校(全)レベル、Stage5が受験レベルという区分けになっています。

中身を見たことはないのですが、Stage1とStage2で中学(の検定教科書)で習う文法のすべてを網羅し、2冊合計で扱う語彙数が約2,300語ということなので、なかなかハードな教材のようです。

理論上、1年で1冊ずつやっていけば高2終了時点で5冊すべて終了し、その時点で盤石の英語力を会得できそうな気がします。

しかし、そうした使い方をしている中高一貫校は(私が見聞きした限りにおいて)それほど多くないように思われます。 🙁

PROGRESS IN ENGLISH(エデック社)

ℤ会の『NEW TREASURE』と並んで有名なのがエデック社の『プログレス』です。ℤ会の『NEW TREASURE』が登場する前は、こちらの採択率がかなり高かったようです。

こちらも5冊で全範囲をカバーしており、難度もかなり高そうです。「英語を英語のまま理解する」というコンセプトで、リスニング重視の教材のようです。

リスニングは(音が流れては消えていくため)後戻りができないので、「英語の語順のまま理解する」トレーニング法としては最適です。

検定教科書 (+ α)

中高一貫校における採択率がかなり高い「体系数学」と違って、先の2冊の検定外教科書の採用率はそこまで高くないのではないかと感じています。

逆に言うと、「検定教科書」を使う中高一貫校が少なからずあるという印象です。実際、我が子の通う中学もそうした学校の一つです。

令和3年度から中学校の新学習指導要領が実施され、中学校で学ぶ英単語の数などもかなり増えたことから、「検定教科書を採用する学校」はさらに増える可能性もあります。

逆に、(教科書のレベルがかなり上がったことから)公立中学の教育現場は、かなり大変になっている気がします。

検定教科書の他に副教材

一口に「検定教科書を使う」といっても、使い方は様々だと思います。

検定教科書だけを使って授業を進めるというのは恐らく例外で、副教材を併用することが多いと思われます。

副教材としては、教材開発会社の中学生用教材や洋書の教材なども使われるケースがあり、学校によって採用教材はバラエティに富んでいるようです。

学校のカリキュラムの難しさ

一口に英語の勉強といっても、目的や年齢、スタート時の英語力、性格、興味の対象、バックグラウンドなどによって「やり方」は異なるのが自然です。

例えば、私が社会人のやり直し英語で英語力をアップさせた方法は、(当時、私個人には合っていて効果があったと思うのですが)学校英語の勉強法とはかなり違いますので、中学生や高校生にはそのまま適用できません

いずれにせよ、「英語の勉強は一律こうあるべき」などとはなかなか言えないわけです。

学校の英語カリキュラムは、帰国生と一般の生徒を分けたり、習熟度別クラス編成を採用するといった方法で、ある程度きめ細かなカリキュラム設定は行っていますが、基本的には一律で進める必要があるというジレンマがあります。これは英語に限らず他科目でも言えることですが…。

したがって、生徒個々人が色々工夫しながら、上手に対応していくことが求められると思われます。

検定外教科書 vs. 検定教科書

さて、『NEW TREASURE』『プログレス』といった「検定外教科書」を使う学校と「検定教科書」を使う学校の場合、英語のカリキュラムに対する考え方に差があるのではないかと感じています。

これは学校の先生に確認したわけではなく、完全に個人的感想ですが…。

まず、「検定外教科書」を使う学校の場合。

検定外教科書はある意味Edgeの立った教材です。例えば『NEW TREASURE』は、英文の質、語彙、文法等に関して総合的にレベルの高い教材という印象があります。

一方『プログレス』は、「英語を語順のまま理解する」コンセプトを持つレベルの高い教材というような印象があります。

したがって、「検定外教科書」を利用する場合にはこれをカリキュラムの中心に据える(=多くの授業時間をかける)という使い方になると思われます。

一方、「検定教科書」を使う学校の場合。

こちらは、元から検定教科書を使っていたケース、「検定外教科書」を採用していた学校がその採用をやめたケース(事情はある程度察知できますが…)があると思いますが、基本的には「加算思考」の発想があるように思います。

つまり、「検定教科書」というベース教材で最低ラインを確保し、不足するものを副教材で追加していくという考え方です。1つ足して足りなければ、2つ目を加える、更に足りなければ…という感じです。

どちらの学校においても、カリキュラムは練られていると思うので、授業を消化していけば確かな英語力は身につくので、その点では大きな差はないと思います。

授業から遅れてしまった場合

問題は何らかの事情で授業から遅れてしまった場合です。

検定外教科書を採用する学校の場合

『NEW TREASURE』『プログレス』といった検定外教科書の場合、「教科書ガイド」のような家庭でリカバリーできる教材がほぼないと思われるので、(遅れの兆候が見え始めたら)早目に手当てする必要があると思います。

『NEW TREASURE』を採用するいくつかの中高一貫校では、「Stage1とStage2の2冊を中3(途中)までかけて消化している」ということも聞いたりします。

また、高校からは(検定外教科書ではなく)通常の検定教科書(東京書籍や三省堂などの教科書)を使うといった話も聞いたりします。中高一貫校の数学で「『体系数学1』と『体系数学2』はよく用いられるが、『体系数学3』以降の採択率はかなり落ちる」という現象に似ています。

「検定外教科書」は、(中学レベルの生徒が使うには)レベルが高い教材ですが、一方で、高校レベルになると、「検定教科書」のレベルがかなりアップする(逆に、高校レベルの「検定外教科書」は、レベルが高過ぎる?)ので、「検定教科書で足りる」という感じなのかもしれません。

検定教科書を使う学校の場合

「検定教科書」を使う学校の場合、「教科書ガイド」が使えるのでリカバリーはやや容易と言えます。

しかし、ほぼ「検定教科書」を使わない(あるいは、一部のみ使う)学校もあります。こうした学校の場合は「検定外教科書」を使う学校と事情は同じかもしれません。

ただ、検定教科書を使う学校の場合、副教材と検定教科書とはある程度リンクさせていると思われるので、(学習の指標として)「検定教科書」は使えるとは思います。

まずは学校に相談、そして自分自身の勉強法の確立

いずれにしても、遅れが目立ち始めたら「塾」や「個別」、あるいは「家庭教師」などに頼る前に、学校の先生に納得いくまで相談してみることでしょう。高い授業料を払っているわけですから。

学校によっては「補習」や「再試験」などで、遅れた分をきめ細かくフォローしてくれたりしますが、(こうした制度を一時的に利用することはあっても)できるだけ授業と家庭学習で完結させる方が望ましいでしょう。

そのためには、早い段階(中学生の間)で自分で何度か試行錯誤を繰り返しながら、「自分に合った勉強法」を確立していくことが重要と思われます。

勉強を教えてくれる人は沢山いますが、自分にフィットした勉強法を教えてくれる人は残念ながらいません。勉強法を教えてもらえるとしても、それは勉強法の一例あるいヒントに過ぎません。

結局、自分に合った勉強法は自分で探すしかないのです。

 

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