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記事に登場する人物像は脚色されていることが多く、仮に、記事の主人公(本人)が記事を読んだとしても、自分のことだと気づかないくらい脚色されていることも少なくありません。
というわけで、フィクションの部分があったり、いくつかの事例を組み合わせて作っているとは思うので、不自然さは否めませんが、興味深い記事なのでコメントをしたいと思います。
都心の小学校では、2月1日と2日の私立中学校受験日にはクラスの半分以上が欠席すると言われている。私立に行くのは当たり前、行かなければ負け組という意識は根深い。
私自身、都内でも中学受験率がかなり高いと言われる地域に居住しています。
しかし、「中学受験をしなければ負け組という意識が根強い」などと感じたことはありません。「中学受験をする・しない」は各ご家庭の自由ですし、中学受験で人生が決まるわけではないですから。
一方で中高一貫校は高校受験がないので、高校3年のカリキュラムを高2までで終わらせ、残りの1年間は受験勉強に打ち込めることも知りました。これは大きな衝撃でした」
違和感を感じたのは、「中高一貫校が、高校3年のカリキュラムを高2までで終わらせる」という事実をこの時初めて知った、という記述です。
「東京大学(難関大学)合格体験記」などに目を通せば、(中高一貫校に通う生徒の体験記には)必ずと言っていいほど書いてあるので、すぐにわかると思います。しかも、このような状況は、昨日・今日始まったことではなく、既に相当前から続いています。私も、少なくとも高校生の頃に、こうした事実は知っていました。
当然のように国公立大学を目指していたが、大学受験では全て不合格。結局、名門私立大学に現役で進学した。
この筆者の方も、さすがに、東大をはじめとする難関大学の合格体験記位は読んでいると思うのですが…。
家に帰って妻に相談すると「だから公立は問題が多いって言ったでしょ。でも小5の4月から勉強しても手遅れだよ」と言われた。
「でも息子は学校のテストほぼ100点で、オール5に近い。私はまだ間に合うと思いました。難関校に強いとされるサピックスや早稲田アカデミーなど人気の塾に問い合わせると、すでに満員御礼。そこで、日能研の入塾テストを受けさせると、息子は半分しか解けていない。あれは血の気が引くほどショックでした」
小5の4月でも別に手遅れということはないですし、入塾テストで半分しか解けなくても不思議はないです。こうした状況からスタートするご家庭も少なからずあると思います。
信雄さんは、周囲の人の話を聞き、「息子は麻布学園に入れよう」と思ったそう。自由な校風の男子校で、自宅から通学しやすいし、息子も楽勝だろうと思っていた。
「麻布学園の問題を自分でも解いてみると、全く歯が立たなかったんです。高度な読解力と根気がいる。息子には、こういう問題をやすやすと解いてほしいし、そんなレベルが高い子どもたちと6年間を一緒に過ごさせたいと思ったのです」
この辺りの記述にも違和感を覚えます。
難関中学を志望校にするのは良いのですが、塾内で常に1桁順位とかでない限り、「楽勝」ということはあり得ないでしょう。
しかも、自分で解いても全く歯が立たない問題を、小学生の息子が解けるようになるためには、相当の努力が必要だと考えるはずです。
通常は(謙虚な姿勢で)、「かなり厳しい道だが、全力で応援(サポート)してあげよう」という気持ちになると思うのですが。
そこから、中学受験の“沼”にはまった。息子は受験勉強には順応できた。偏差値35からのスタートだったが、半年で偏差値50まで上がった。5年の9月からは難関受験に頭角を現している新興塾に転塾し、勉強三昧の日々が始まった。
「でも、まだ動画やゲームなどをやっているんですよ。他のライバルは小1から塾に通っているので、4年以上の差がある。5年の5月には、打ち込んでいたサッカーもやめさせました。
半年で、偏差値35 → 50は立派です。
しかし、打ち込んでいたスポーツや習い事(サッカー)を親の意向で辞めさせるのは良くないですね。
体力的にきつくなってきたり、本人が勉強に打ち込みたいから、という本人の希望があればよいのですが、親主導で一方的に辞めさせるのは逆効果になる危険性があると思います。
私は息子のためを思い、心を鬼にしたんです。憎まれてもいいから、息子にはいい将来を与えてやりたかった」
子供の将来のことを考えて中学受験をさせるわけですが、一方で中学受験は親主導。「子どものため」と言いつつも、親の自己満足の部分も当然あります。
「親都合」の側面を自覚しながら中学受験に立ち向かわないと、「自分の貴重な時間をこれだけ使っているのに…」という、被害者意識が強くなると思います。
子供はそんなに都合よく親の思い通りに動きませんので。
信雄さんは必死だった。仕事をしながら息子の生活と勉強を管理。部下を管理するPDCAサイクルの考え方を息子の管理に持ち込んだ。そして、空き時間に塾の教材を研究。塾の授業の復習と予習の時間を確保するために、息子のスケジュールを作った。隙あらばタブレットとゲーム機に手を伸ばす息子に手をあげたことも何度もあるという。
子供は部下ではなく、会社組織のように指揮命令系統(公式権限)では管理できないので、きっちりPDCAサイクルを回そうとしても大抵うまくいきませんね。
ぎちぎちに管理しようとせず、かなり緩めの管理でちょうどよい位です。
自分自身を振り返っても、小学生時代に勉強面で管理されたことはないですし、大人になっても仕事面でガチガチに管理されたこともありません。
なので、細かくスケジュールを決められ、その通りに進めなければならないという状況は、勘弁して欲しいです。大人でもそうなのですから、子供はなおさら嫌がると思います。
「11月以降の追い込みの時期に志望校の“圏外”判定を受け、息子に向かって“俺の努力、時間、金をドブに捨てた”と言ってしまった。“もうやめようか”と言ったら息子は“やめない”と泣きだしたんです」
これは子供に対する発言としては最悪ですね。
結局は、「子どものため」と言いながら「親の都合」なので、その辺を自覚して中学受験を進めないと、ストレスだけが増していきます。「自分の時間をこれだけ犠牲にしているのに…」という被害者意識が生まれ、中学受験が苦難の道になり、親子関係も悪化します。
直前期になったら、「模試の偏差値」は関係ないので、現実的な併願戦略を組みつつ悔いのないように準備するだけだと思います。
そこで息子に“次は大学受験だ”と伝えました。その学校はGMARCH(学習院・明治・青山・立教・中央・法政の六大学の総称)に多数の合格実績がありますから」
だが入学すると、予想以上に授業のスピードが速い。息子は最初のテストで学年最下位レベルの成績だった。しかも行事に力を入れており「みんなで一緒にがんばろう」という校風にもなじめなかった。
(中略)
妻と息子で話し合い、中学2年進級時に退学。地元の公立中学校に通うことになった。
お子さんに合わなかった学校ならば退学も仕方がないのですが、親の方がいつまでも志望校に落ちたことを引きずってしまうと、(それがお子さんにも伝わり)折角の中高生活を楽しめず、お子さんが学校嫌いになってしまうというリスクがあります。
息子さんはその後学校(高校)にも通っているようですし、奥様も息子さんに理解を示しているようなので、父親の気持ち次第で、ここからいくらでも挽回ができると思います。