本日も引き続き、中学受験算数と中・高で学ぶ数学の関係を考察したいと思います。前回に引き続き、ラサール中学(2024年入試)の問題で考えます。
循環小数(循環節)
まず、(1)です。
これは、基本的に高校レベル(数ⅠA)と思われますが、中学受験では既に定番化している問題です。なので、同校を受験する受験生の皆さんは難なく解けた問題だと思います。
3÷7の計算は丁寧に行うことがポイントで、3 ÷ 7 = 0.428571428…となります。
計算結果から”428571”が繰返し現れる循環小数であることが分かります。
表で表すと以下のとおりとなります。
(0) | 6で割った あまり |
ー | ー | ー |
4 | 1 | 小数第1位 | 小数第7位 | 小数第13位 |
2 | 2 | 小数第2位 | 小数第8位 | 小数第14位 |
8 | 3 | 小数第3位 | 小数第9位 | ・・・ |
5 | 4 | 小数第4位 | 小数第10位 | ・・・ |
7 | 5 | 小数第5位 | 小数第11位 | ・・・ |
1 | 0 | 小数第6位 | 小数第12位 | ・・・ |
表で明らかなように「4,2,8,5,7,1」は、それぞれ6で割った時のあまりに対応していることが分かります。
小数第100位を求めると、100 ÷ 6=16 あまり4となり、あまり4に対応するのは5であることが分かります。よって、小数第100位の数は5となります。
逆に、「0.428571428…と続く循環小数を分数で表しなさい」となると、どのように考えれば良いしょうか。
これも(高校で習う)定番の解き方があります。
この循環小数を ▢ として、10倍、100倍、1000倍、…1000000倍します。
(ア)▢ → 0.4285714285…
▢ ✕ 10 → 4.285714285…
▢ ✕ 100 → 42.85714285…
▢ ✕ 1000 → 428.5714285…
・・・
(イ)▢ ×1000000 → 428571.42857142…
もとの循環小数(ア)と1000000倍した循環小数(イ)を比べると、小数点以下の部分(0.4285142…)が一致しています。
よって、(イ)-(ア)⇔ 999999 ✕ ▢ = 428571 となります。
両辺を142857で割ると、7 ✕ ▢ =3 から、▢ = 3/7
桁数が多いのでやや分かりにくいかもしれませんので、「0.363636…を分数で表す」と簡略化した例で考えます。もとの循環小数を△として、「36」が循環するので △ を100倍します。
(ウ)△ = 0.363636…
(エ)△ × 100 =36.363636… ☞ 小数点以下の数値が揃います
(エ)-(ウ)⇔ 99 × △ =36 両辺を9で割って、11 × △ =4
$$\triangle=\frac{4}{11}$$
不等式
続いて(2)です。
$$\frac{1}{3} < \frac{▢}{19} < \frac{7}{8}$$となるような▢を求める問題と考えます。
まず、左側の不等式を考えます。
$$\frac{1}{3} < \frac{▢}{19}$$
分母を57に揃えると以下のようになります。
$$\frac{19}{57} < \frac{▢ ✕ 3}{57}$$
次に分子に注目すると、19 < 3 × ▢ ⇔ ▢ > 6.33… ▢は整数なので、▢ ≧ 7 となります。
次に右側の不等式です。同様に分母をそろえます。
$$\frac{▢}{19} < \frac{7}{8} ⇔ \frac{▢ ✕ 8}{19 × 8} < \frac{7 ×19}{8 × 19} ⇔ \frac{▢ ✕ 8}{152} < \frac{133}{152}$$
分子に注目すると、▢ × 8 < 133 ⇔ ▢ < 16.6… ▢は整数なので、▢ ≦ 16となります。
2つの不等式を合わせると、 7 ≦ ▢ ≦ 16 となります。
不等式によって範囲が絞り込めたことになります。
よって、最大の分数は ▢ = 16 のときで、
▢ =7,8,9,…,15,16 なので、分数の個数は(16 - 7)+1=10個 となります。
$$A=\frac{16}{19} \qquad 10個$$
不等式は、数研出版の「体系数学1(代数編)」の第4章で扱われますが、その後数学のカリキュラムが進むにつれて、不等式の適用範囲が広がっていきます。
高校数学になると、「不等式で評価」する問題が証明問題などにおいて頻繁に登場するので、考え方に慣れておく必要があると思われます。
おわりに
難関中学の入試問題は、必ずしも算数分野を極めた問題が出題されるわけではなく、❶中高で学ぶ数学の前振り(?)的な問題、❷中高で学ぶ数学で特別な前提知識を必要としない領域(整数・場合の数など)の問題が出題されるケースが多くなっていると思われます。
数学の勉強を開始した後、改めて(中学入試を)振り返ってみると、出題された先生方からのメッセージが伝わってくるような気がします。