高学年の思考力(雑感)

中学受験
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前回は「低学年の思考力」をテーマに雑感を書き連ねましたが、今回は高学年の思考力がテーマとなります。

一口に「思考力」と言っても意味は広範囲に及ぶので、前回の記事では「中学受験における思考力」を以下のように考えました。

中学受験における思考力とは、「今まで学んだ知識や自己の経験に基づき、入試問題を分析し、時間内に正解を導き出す力を意味します。思考力のある受験生は、複雑な問題・初見の問題に対しても論理的に考え、(時間内に)正解を導き出すことができます

 

制限時間付きの思考力

中学受験に要求される(あるいは世の中の試験全般に共通して必要となる)思考力には、制限時間がある中での思考力という制約が加わります。

長期間粘り強く考え続けることができる思考力は、現代のような不確実な時代には欠かせない力です。しかし、このような素晴らしい思考力の持主が受験で必ずしも成功するわけではありません。

なぜなら、中学入試本番では(算数であれば)1問数分とかせいぜい20分位で正解する必要があるからです。制限時間が付された上での思考力という点がポイントとなります。

もちろん、論理的な思考や正しい試行錯誤のやり方が身についていれば、(時間内に)効率的に問題を解くことは可能なので、「優れた思考力」と「制限時間付きの思考力」の間には一定の相関関係は存在するとは思われます。

しかし、思考力を含めた人間の能力の発展過程は個人差が大きく、中学、高校、あるいは大学生や社会人になってからこうした能力が開花するケースもあります。

中学受験における認識ギャップ(=情報の非対称性)

中学受験において、(いわゆる難関校と言われる学校は)思考力を問う問題を出題することに注力していると言われます。もちろん、試験で測定できるのは制限時間付きの思考力ですが…。

一方、難関校の合格実績を一人でも多く確保したい大手進学塾は、受験生(小学6年生)の「思考力」がどの程度のものなのか、(受験指導を通じて)誰よりも正確に実態把握をしていると思われます。

言い換えると、中高一貫校は、自校の生徒である中学生・高校生について、どのような教育を施すべきかという点に興味があります。その教育を施す上で一定の条件(=想定する思考力)を備えた生徒を選抜したいと考えてはいるものの、入学する前の小学生の実態(=実際の思考力)については良く知りません。

この点、小学生の能力(学力や思考力の発展プロセス)を日々の指導を通じて熟知しているのは、中学受験塾です。しかし、中学受験塾は中高一貫校において施される教育やその後の能力開発については、あまり知りません(それほど興味もないと思います)

いわば、中高一貫校と中学受験塾の間に情報の非対称性(Information Asymmetry)が生じていると言えます。そして、この「非対称」のしわ寄せが中学受験生にかなりの負担を強いているという点に注意する必要があります。

思考力に頼らないパターン学習と大量演習

中学受験塾は、「思考力」という個人差が大きく捉え所のない能力に頼ることは、合格実績を上げるうえでは心もとないと考えていると思います。

そこで、思考力がそれほど伴わなくても難関中学の入試問題が解けるように、徹底的なパターン学習を行う傾向が強まっています。

つまり、試験合格のためには効率良く問題を解く力が重要であり、この力があれば、思考力がそれほど無くても(難関校に)合格することは可能です。

その結果、大量の知識と経験値で乗り切るという(塾にとって)より確実な戦略を採用します。

中学受験合格という視点では、「理にかなっている」とも思われますが、一方で、この方法は子供に相当の負荷がかかります。

難関中学は、こうしたパターン学習では解けないような(思考力を問う)問題を出題します。しかし、所詮は制限時間付きの思考問題なので、効率的な解き方は存在し、塾はそれをすぐにパターン化します。

かくして、パターン学習と大量演習が増え続ける結果、子供たちの学習負荷はどんどん増えていくことになります。

これは、現状の中学受験の大きな問題点ではありますが、しかし、この流れに”ある程度”乗らないと、勝負にならないという現実もあります。しかし、際限なく乗ってしまうことは(お子さんを潰してしまうリスクもあるので)危険です。

(過度な負担になっていないか)親御さんが注意して見守ってあげて欲しいと思います。

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