麻布、開成、武蔵も…学習塾に支配される名門進学校の厳しい現実

雑感
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少子化による中学受験環境の変化

「中学受験を主とする学習塾が、進学校にとって無視できない存在になったのは1990年代後半あたりから」と振り返るのは都内私立中高一貫男子校「御三家」の一角、麻布の元教師。「かつては、学習塾の動向など、まったく気にしていなかった。というより、彼らと接点を持つこと自体、良しとしなかったのです」(中略)少子化が加速する中で、出来る生徒をより多く集めたいのは名門校も一緒だった。 「世紀が変わる頃から、学習塾とのつきあい方も変化した。こちらから積極的にアプローチすることがないのはこれまでと一緒ですが、向こうから来た時は対応する。方針転換もやむなしとの判断に傾いたのです。そのあたりは開成も同様だったようです」(麻布・元教師)

「力関係の変化」という意味では、少子化の影響が大きいのでしょうね。少子化が進む中、私立学校の数は逆に増えていきましたので、私学業界の競争環境は厳しくなりました。

言葉は悪いですが、従来のように「唯我独尊」では通用しない時代になってきたということでしょう。

塾が薦めやすい学校の特徴

90年代半ば頃から、中高一貫校の新興勢力が大学受験戦線で活躍しだすのですが、実はこれは学習塾が後押ししている部分が大きい。中学受験を目指す生徒たちに、どこが向いているか塾がアドバイスする。そうした時、普段から交流がある学校を勧めるケースが少なくない

これは確かに子供が受験生だった時代にも感じました。塾が薦めやすい学校としては、例えば以下の3つが考えられます。

① 塾として、合格者数等の実績が目玉となるような学校(≒名門校)
② 塾の偏差値通りの結果になりやすい学校
(≒合格が比較的計算しやすい学校、名門校の併願校)
③ 塾として情報を入手しやすい学校(≒普段から交流のある学校)

①の学校は、御三家をはじめとする難関校です。塾として合格者数を増やし、それを積極的にアピールすることで、より多くの塾生を確保することができます。

②の学校は、入試問題にあまり癖がなく、塾の勉強をまじめにやっている生徒にとって、合格が比較的計算しやすい学校です。 ①の学校群は特色ある問題を出題したり、塾の模試などとは出題形式の異なる入試問題の割合が高いことから、特別な対策が必要となるケースが多く、また、入試問題との相性などもはっきりと出る傾向があります。そこで、①の学校の併願先として②タイプの学校の併願を進められるケースが一般的です。

③は、今回の記事にも取り上げられていますが、その学校から各種の情報が得られたり、その学校の先生方との面識が出来たりすることで、(塾としても)その学校のことをより深く知ることができるようになります。結果、「入試の対策」が立てやすくなったり、あるいは、その学校に「好意的な印象」を持つようになります。

情報不足=リソースの配分減

一方、これから大学受験で伸ばしていきたいと考えている学校の側もまた、積極的に学習塾にアピールしてくるわけです。そうして、持ちつ持たれつの関係ができていくのです」(中略)「持ちつ持たれつといっても、癒着というのとはちょっと違う。情報をたくさん得られている学校については、そこに合わせたテストや授業を組みやすい。そうしたコースを受講した生徒には当然、その学校を勧めることになります。逆に、まったく接点がない学校については、対策を十分に立てられないため、生徒に積極的に勧める場面が格段に減ってしまうのです」

新興校は何もしなければ生徒は集まりません。まずは受験者数を増やす必要があります。この辺の危機感やプレッシャーは黙っていても生徒が自然に集まってくる名門校とは比べ物にならない。あの手この手を考えなければならないでしょう。

その中で、塾と積極的に連携をとる(④)ことで(塾から見た)認知度を上げることも一つの手段でしょう。

また、比較的素直な入試問題を出すことで(②)、(難関校の併願校として)受験生を集めることができれば、(生徒層の底上げにもなり)将来的に大学の合格実績を上げることが期待できます。

一方、①の学校は「名門校であること」だけで生徒が集まります。しかし、名門校は大学合格実績によって「名門校」と位置付けられているという傾向は否めません。

ところが、何年か連続して大学合格実績が振るわなければ、他のライバル校に比較してアピール度が弱まってしまいます。

さらに、塾との接点を頑なに持とうとしない名門校の場合、(元々対策が立てにくいうえに)著しく情報が不足してしまう結果、他の名門校の入試対策により多くのリソースを割く方が(塾としても)合格実績を計算しやすいということになります。

結果的に情報不足がその学校の対策に対するリソース配分の減少につながっていくことになります。

情報を握る受験塾の存在の大きさ

情報化社会と言われる現在、従来に比べると(学校説明会や学校のホームページ等を通じて)情報は個人レベルでも入手しやすくなったと言えます。

しかしそれでも、塾の情報収集力・分析力に比べれば格段の差があります。

中学受験とは、「学校側は優秀な生徒を獲得し、生徒(保護者)側は志望校に入学する」ことがすべてと言っても過言ではないでしょう。

この構図の中では、塾は常に「中抜き」・「代替」の危険性がある。

中学受験塾(業界)としては、自らの存在を中学受験において不可欠なものにする必要があります。そのカギとなるのが「情報」です。

中学受験のための綿密なカリキュラムや教材に加え、学校側の情報と塾生(保護者)側の情報の両方を持っている「受験塾」は、中学受験において非常に大きな存在となりました。

 

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