難関中算数は究極の領域に…
先日書いた記事で、難関校の算数は「整数」(数の性質・規則性等)、「場合の数」といった分野からの出題が高まっていることを指摘しました。
こうした流れから、「難関校の受験算数は『究極の領域』まで入り込んで来たな」と感じます。
というのも、「整数」や「場合の数」は、中学レベルの数学(=中学の教科書)ではほとんど扱われず、高校レベルにおいてガッツリ勉強する領域だからです。
ちなみに、多くの中高一貫校で使われる体系数学という(検定外)教科書がありますが、この体系数学2代数編[中学2,3年生用]の最後の方で少しだけ、「場合の数」や「確率」が扱われる程度です。
しかも、「場合の数」に関しては、中学受験勉強で解くレベルの演習問題の方がずっと難しい。
整数分野の問題は小学生にも解ける
高校で習う微積分あるいは指数・対数関数・三角関数(超越関数:Transcendental Function)などが膨大な準備作業(=約束事)を土台に議論が展開されるのに対して、「整数」や「場合の数」の分野というのは準備作業がほとんど必要ありません。
つまり、小学生でも頑張れば何とか解けるような問題が多くあるのです。
小学生でも解けるからといって(微積分などより)易しいわけではなく、むしろ、定まった手法が少ない(=研究余地が多く残されている)分野と言えます。
整数分野の問題は無尽蔵に作れる
さらに(中学入試という観点から)重要なことは、(出題者から見て)ほぼ無尽蔵に問題が作れるという大きなメリットがあることです。
難関校の数学の先生方が苦労して(小学生らしい)特殊算を組み合わせた複雑な問題を作っても、「(塾で徹底的にトレーニングを積んできた)受験生は簡単に解いてしまう。」のです。
結局、難関中学の入試で差をのつく問題を作問するには、「整数」や「場合の数」などに活路を見出さざるを得ない状況と思われます。
もっともこれは、難関校の数学科の先生に直接聞いた話ではなく、私の単なる「邪推」。
なので、真偽は保証しかねます。 😎
中学入試は(超)先取り?
難関校の算数が解けるということは、「思考力・判断力・表現力」が小学生段階からかなり高いことの証左でもあるのですが、それは小学生の中でも特に早熟なお子さんだからこそです。
中学受験塾に行っていると(周りのお子さんが優秀なので)感覚が麻痺してきますが、小4あたりからは小学校レベルを超える勉強をしているわけです。しかも、学校とは比べ物にならないくらいの難度の高い内容を凄いスピードで…。
で、塾では3年間どんな勉強をしているのでしょうか?
小学校の分野を「これでもか、これでもかっ!」っていう位に深堀している?
まさか、そんなはずありませんよね。 😎
やっていることは(手っ取り早く)中学分野の先取りです。
さらに、(超)難関校対策においては(中学分野に飽き足らず、部分的には)高校分野の先取りまで進める必要がある。
いわば、超先取りです。
なので、こうした問題が(中学入試を受ける段階で)できなくても、全然気にする必要はありません。なぜなら、中学校でもう1回やるからです。
危惧すべきなのは、難しいことを小学校時代にやり過ぎて嫌気がさしてしまったり、逆に、中学の勉強を舐めてしまう点にあります。
中学でもう一度やる
中学入試を終えて晴れて中学校に入学し、中学3年間の教科書(算数、国語、理科、社会)を眺めるとちょっと拍子抜けします。
「え? これほとんど塾で勉強した内容じゃない?」
実は、中学校で習うかなりの部分は(完全ではないにせよ)中学受験生にとっては既習状態なのです。
社会や理科に関しては、中学受験で勉強した内容をもう一巡させる感じですし、中学数学でもまったく初めて習う領域は(小学校時代での先取りの個人差はありますが)、代数では二次方程式(因数分解と解の公式)、幾何は「証明」位でしょう。
もっとも、中学で最初の頃に習う代数の「文字式・マイナス・移項」あたりは、方程式を解くツールになるので、習熟は必要ですが…。
中学で習う一次方程式の応用問題は、中学受験で特殊算を使って散々解いた問題(食塩水、速さ、売買損益など)を、中学で習う「方程式という手法」で解き直すだけです。もっとも、小学校時代の特殊算の解き方で解いても中学ではダメで、きちんと式を書かないと答えが合っていてもバツ(0点)になります。
唯一英語は(帰国生でない限り)中学受験になかった科目ですが、今時は公立小学校でも正規科目として勉強しているので、ゼロスタートということはありません。
一昔前は、中学時代に習う英単語は1200語程度(現行は1800語に増加)と言われていましたが、1200語であれば(現在であれば)小学校時代の単語(700語)に加えて中学入学前に少し集中して学習すれば、クリアできるレベルです。
もっとも、中学では英語は初歩の初歩から始めるので、(英語嫌いにさえならなければ)入学まで英語の勉強をしなくても心配はありません(もちろん、やっておいた方が良いですが…)。
いずれにしても、あまりにも難しいことを、しかも猛スピードでやり過ぎて、勉強嫌いになってしまったら元も子もありません。
リアルオプションという考え方
金融商品にオプションという概念がありますが、これを事業評価に応用した手法にリアルオプションという考え方があります。
「リアルオプション」では、不確実な環境下では投資を先送りし、採算性が確実になった時に本格投資を行うという手法を採用します(膨大な投資が必要となる医薬品の開発などが例です)。
すなわち、臨機応変に投資の判断を行うことにより、企業価値を高めるわけです。
勉強も同じだと思います。
時機が到来するまでは基礎を重視して地道に足腰を鍛え、「ここぞ」という段階になってから勝負をかける。
勝負所はそれぞれのお子さんによって違います。中学受験段階で一気にスパートするのがベストとは限りません。
中学受験は程々にして大学受験でスパートするのも良いでしょうし、中学受験よりも高校受験に向くお子さんもいるでしょう。
会社にとっての「魅力ある事業の選択」も然りですが、勝負所(=意思決定)を急ぎ過ぎて、その後の成長の芽を摘んでしまうことがないように、むしろタイミングを先送りすることも有効と思うのです。