今日は中学受験で頻繁に活用する「線分図」について、「和差算」を例にお話をしたいと思います。
まず、以下の問題をご覧ください
(問題)兄と弟の年齢の合計は25歳で、2人の年齢の差は7歳です。弟の年齢は何歳ですか。 |
連立方程式は通常は中2で習う内容ですから、既に4年先取りになっていることになります。中学受験が大変なわけです。
一般的に、塾などでは以下のように、兄と弟の年齢の線分図を描いて解きますね(図1)。
線分図を描くと兄と弟の年齢合計が25歳、兄と弟の年齢の差が7歳になっていることが良くわかりますね。
兄の年齢を弟の年齢に合わせるんですね。視覚的に言えば、線分図の「出っ張った部分」を消してしまいます。
そうすると、弟の年齢が2人分になります。
出っ張り部分を消したので、合計年齢の25歳も(兄の年齢を減らした分)7歳減らして(25-7=)18歳にします。
そうすると、弟の年齢が2人分で18歳となりますね。よって、弟の年齢=18÷2=9(歳)と求めることができます(図2)。
「(年齢差をなくして)同じ年齢にそろえて2で割る」わけですね。
はい。「揃えて2で割る」というのがポイントですね。
次のような問題(例2)も同様の方法で解けます。
① 姉と妹が合計でおはじきを34個持っている
② 2人のおはじきの差は12個
③ 姉の持っているおはじきの数を求める
この問題では、数の多い(出っ張っている)姉にそろえるのが得策ですね。
姉にそろえるため、妹のおはじきを12個増やします。これで、おはじきの数は姉2人分になります。合計も12個増やす必要があるので(34+12=)46個となり、46÷2=23(個)が姉の持っているおはじきの数となります。
もちろん、(出っ張りを消して)妹の方にそろえても良いのですが(問題では姉のおはじき数を問われているので)ひと手間増えてしまいますね。
はい。
その場合はおっしゃるようにどちらにそろえても構いません。
このレベルの問題であれば、5年生後半あたりになると、線分図を描かずに暗算で秒殺出来るレベルのようになるのですが、慣れないうちはなかなか大変です。
初めて習うことはそう簡単には身につかない、習熟にはそれなりに時間がかかるということですね。
その通りです。
ところで、「線分図」で留意すべき点は2つあるのです。
一つは、上記で説明したように「線分図を使って答えを出す」というプロセスです。
そしてもう一つは、問題文を線分図で表すというステップですね。
つまり、
① 問題文を線分図で表すステップ
② 描かれた線分図を使って問題を解くステップ
の2つに分かれる、ということです。
これは意外と見過ごされてしまうのですが、両方のステップを同時に行うことは、子供には結構難しいことなのです。
まず、適切な線分図を描くためには、2つの数の大小関係を認識し、和と差を線分図に書き込まなければならないわけです。
そして、描いた線分図を使ってちょっと変わった解き方ー揃えて2でわるーで問題を解くわけですね。
問題を解くのにやらなければならない作業がいくつか出てくるので、慣れるのに時間がかかるわけです。
さらに3量以上になると、文章を読んで3つ以上の量の大小関係や差を認識することは(子供には)かなり難しいですね。
その上、「この問題を解くのに線分図(和と差の関係)が使えるのか」といった点を問う問題(=非典型題)まで出されたりします。
こうした問題が、線分図を習ったその週に、いきなり応用問題として出てくるわけですから、子供たちにはかなり過酷な内容となります(応用問題まで全部できる必要はないのですが…。)
いずれにしても、塾の授業(教材)はステップが粗いのです。
例えば、和差算の問題で線分図に慣れていないお子さんが(小4では大抵のお子さんは慣れていないと思いますが…)、2つのこと(線分図を描くこと+線分図で問題を解くこと)を同時にやろうとすると、混乱してしまうんですね。
すると、「そろえてから2で割る」ところを、「先に2で割ってしまったり」するんですね。つまり、平均を求めてしまう。そして平均に「差」をプラス・マイナスしてみる…みたいなことを平気でやってしまうのです。
しかも、塾では沢山宿題が出されるので、急いでやらないといけない。そうなると、あまり深く考えずに、見よう見まねで(塾で習ったような…しかし)間違った方法で大量に問題を解いてしまう、などという笑うに笑えない話も出てきます。
「塾で学ぶことをあらかじめ予習しておく」というのは、考えてみると変な話なのですが、塾では十分な時間が割かれない導入部分などについては、ご家庭で補うしかないわけです。
具体的には、導入としてどのように教えればよいのでしょうか。
この辺を明確に分けてトレーニングする教材としては、文章題 和差算・分配算―小3レベル (サイパー思考力算数練習帳シリーズ)がお勧めなのですが、特段問題集を用いなくても、親御さんが雑記帳に線分図を書いてお子さんに解かせてみればよいと思います。
毎日2~4問解いていけば、1週間~10日もすると十分マスターできます。お子さんに「線分図が描ければ答えが出る」という自信が生まれると、次は(文章題から)線分図を描く作業の方に集中できるわけです。
文章題をいきなり解くのではなく、まず描かれた線分図を使って2つの数量を求める訓練を先にするのですね。ステップを2つに分けて、順番に克服する…と。
自作問題に関しては、線分図を描いて、あとは和と差を記入するだけですから、私でもできそうですね。 😛
ところで、問題を作るときの注意点はありますか。
①であれば「和が36、差が8」のような感じですね。②であれば、「和が41、差が15」とか…。
要は、和と差を偶数か奇数に揃えることです。
なお、3量の場合は、先に答えを作ってから問題を作った方が良いでしょうね。
5年生~6年生頃になると数の性質(偶数・奇数)を学ぶのですが、その時になると数の性質やその意味についてより深く理解できるようになると思います。
本日はありがとうございました。
[2] 上記のステップに分けてトレーニングを行う。まずは、(与えられた)線分図を使って答えを出す方法を先に習熟する。
[3] [2]については、家庭で自作問題を作るのが有効である。