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受験科目の算数にはある特徴がある
受験算数の特徴として、次のような特色が挙げられています。
〇配点が高い
〇合格者と不合格者の得点差がもっとも大きい
〇特殊である
〇取り組みの差が出やすい
小学校で勉強する「算数」、中学受験で出題される「受験算数」、中学校以降で勉強する「数学」はまったく異なります。方程式では解けない問題もたくさんあります。特殊であるがゆえ、前提となる知識や考え方を知らなければ手も足も出ません。そのため、どの分野も新規事項を理解し、さらにそれを使えるように定着させる努力が必要です。
「まったく異なる」というのは言い過ぎですが、受験算数では解き方を知らなければ(少なくとも試験時間内には)解けない問題も多くあるので、解き方を知り、それを定着させる必要があります。
「受験算数」は暗記で乗り切れるか
公文で5年の夏までにF教材?
公文を選択されたご家庭には、「5年生の夏までにはF教材(6年生相当)を終わらせてください」と話しています。というのも、5年生以降は塾での算数の内容が高度化し、公文に取り組む・通う時間的余裕がなくなるからです。
中学受験用教材として広く使われている四谷大塚の予習シリーズ。
改訂後のカリキュラムによると、(分数や小数を含む)中学受験に必要な基礎的な計算は、小4の夏期講習までにすべて扱われます。
なので、5年生の夏だと正直遅いですね。小5になると、算数は入試頻出単元を扱いますし、国語で扱う文章も難しくなります。さらに、理科・社会の内容も本格化してきます。
小5に入って計算力が身についていないのであれば、他の方法(市販の計算ドリルを学校に行く前の時間を使って解くなど)で計算力を強化した方が現実的だと思います。
とはいえ、公文も一長一短。「汚い字をすべて消してやり直しをさせる」「とうに習得できている内容でもしつこく繰り返す」といった先生(教室)に当たると、子どもが公文、ひいては計算、さらには算数そのものが嫌いになってしまいます。その兆候がある場合は、F教材まで終わらずとも身を引くほうが賢明です。
公文に限らず、算数嫌いになってしまっては元も子もありません。
ご家庭によって公文の利用の仕方や利用目的も様々だと思うので、必ずしも速く進めることが良いとも限りません。
ただ、「中学受験塾に入るための計算強化手段」と捉え「入塾までにF教材まで終わりそうもない」のであれば、所期の目的を達成できない可能性が高いわけです。その場合には別の選択をした方が賢明かもしれません。
別に公文教室に行かなくても、計算力を身につける方法はいくらでもあります。
暗記数学(算数)の意味
ところで、受験算数は暗記で乗り切れるのでしょうか? 一定の受験攻略本には「受験は要領」「受験は暗記」という方法が紹介されていますよね。これはYESとも言えるし、NOとも言えます。(中略)そしてこれらの本は高校受験生、大学受験生に向けて書かれています。こういった著者が述べる「暗記」は、小学生がよく理解せずやみくもに「暗記」しているのとはワケがちがいます。教科書やテキストを読んで自分で根本理解ができたうえで、さらにさまざまな知識を忘れないようにどう整理し、紐づけるかという「テクニック論」です。
暗記数学という用語が出始めたのは受験は要領(和田秀樹著) あたりからでしょうか。いわゆる数学の解法暗記の話です。
私自身はこの種の本をじっくり読んだことがないので誤解があるかもしれませんが、概ね以下のような趣旨だと思われます。
「暗記数学」と言っても、ただ闇雲に暗記したり、(浅い理解で)何回転もさせるわけではなく、解法をしっかり理解して(解法の流れや解法パターンを問題演習を通じて習熟し)記憶するという流れになると思います。いい加減な理解で暗記してもすぐ忘れたり、少し目先を変えられると対応できないので、暗記効率を上げるためにも深い理解が必要ということだと思います。
そして、現在の受験算数も基本的にはこの流れの中にあると思います。なぜなら、限られた試験時間の中で大量の問題を処理する必要があるからです。
問題を見たらある程度パッと解法が思いつく問題があるとか、少なくとも「こうした手順で考えれば解けるのではないか」という方針が短時間で立たないと勝負にならない。
受験数学(算数)ができる人は(解法を暗記している意識があるかどうかは別にして)、① 解法が頭の中に数多く蓄積されていて、②それを短時間に自在に引き出すことができるのだと思います。
計算結果の暗記は暗記算数(解法暗記)ではない
この点、受験算数に出てくる「3.14の計算結果」などの計算結果の暗記は違う話です。こちらは、解答時間の短縮という点では先の思考プロセスの短縮と同じ効果がありますが、基本的に計算手順のショートカットであり、思考の話ではありません。
ただ、計算においても「計算の工夫」のような思考に係る部分があることには留意する必要があります。例えば、3.14の計算でも、①表面積はまとめて(最後に)3.14をかけるとか、②体積を求める問題では、比を利用して3.14の計算を楽にすると言った具合です。こちらは思考(解法)の領域に関わる話です。
「3.14の計算結果」などは、特に暗記しようと思わなくても(問題演習を通じて)結果的に覚えてしまうもの。むしろ、計算結果を覚えてしまっているが故に、「3.14の計算を工夫せずに進めてしまう弊害」も気になります。
もちろん、「3.14の計算結果」や「11×11~19×19の計算結果」位は暗記しておくに越したことはないでしょう。それによって計算プロセスを短縮化できますし、つまらない計算ミスも防げます。但し、思考とのバランスの問題で、覚える時期には注意が必要だと思います。
先の公文の例ではありませんが、計算の正確性やスピードを身につけるのには確かに時間がかかります。しかし、「(中学受験に役立つ)計算結果の暗記」というのは、それほど沢山あるわけではないので、覚える時間は大してかからないということです。
理解を伴った暗記
受験算数はテクニカルな丸暗記だけでは乗り切れません。和差算を「(和+差)÷2=大」と覚えたところで、設問を読んだときに〝和差算を使う〞と気づかなければアウトです。ただし、4年生の間はこの方法でもある程度復習テストで点数がとれてしまうのが厄介なところ。点数がとれるだけに「この方法でいいんだ」と思ってしまい、その方法を続けてしまいがちです。
基本的概念の理解や基本問題レベルまでクリアできていれば、まずはOKだと思います。
塾では毎週扱う単元が変わるので、しばらくすると(学習した内容を)「忘れてしまう」ということはよくあることです。忘れるのは自然なので、あまり神経質にならない方が良いでしょう。
理解した上で忘れているのであれば、(次は)少ない時間で思い出すことができます。
中学受験塾では小4から毎週のように新しい内容を勉強します。
その週に習った内容をその週のうちに理解して習熟(定着)させるということは(理想ではありますが)多くのお子さんにとって現実的には難しいと思います。
学年が進むにつれて学習項目が増えてくると、その分復習も大変になります。一方で、学習した項目間の結びつきや関連性も見えてくるので、単元毎の理解に留まらない単元間の理解など、より進んだ理解ができるようになります。
中堅校狙いならば典型題を詰め込む
丸暗記型か否かを見抜く方法は、「子どもに解き方を説明させること」です。スラスラとよどみなく説明できたら塾の先生になれます……というより、それは塾の先生の説明を丸暗記している証拠。たどたどしく(考えながら話すとスラスラ話せません)自分の言葉で、親にでもわかる説明ができていれば大丈夫です。
これはどちらかと言えば、小4~小5で「あるテーマを初めて習う」段階の話だと思います。初めて学習する内容はなかなかスラスラ説明できませんから。
また、「塾の先生の説明の丸暗記」かどうかは、子供の説明に矛盾や論理の飛躍があったりするので分かります。あるいは(数値替え問題でない)「類題」を何問か解かせると(間違ったりするので)その時点で案外分かります。
一方、学習がかなり進んできた時点(例えば小6後半)になると、典型的な一行題あたりはスラスラよどみなく説明できるようになっておく方が望ましいですね(但し、面倒臭がって説明してくれないかもしれませんが)。
ただし、志望校が最難関校や難関校でなく、「とにかく算数が苦手」というお子さんは、直前期はひたすら典型題を詰め込む、つまり暗記することが得点につながります。中堅校では基本的にパターン問題が解ければ算数はほぼ7割、点数がとれます。理科や社会の知識問題を詰め込むのと同じです。だからといって「じゃ、直前期に暗記すればいいのね」というのもまたちがいます。一生懸命考え、取り組んできた月日があってこそ、最後に暗記が叶うのです。そこははきちがえないでくださいね。
本来であれば、「典型題」を詰め込む時期としては小6の夏頃まで、遅くとも(入試問題演習が佳境となる)11月までだと思います。
ただ、一口に「典型題」と言っても、算数講師の考える典型題にも幅があったり、あるいは、残された時間や志望校の出題傾向もあったりするので、一概に「これが解く(覚える)べき典型題」とは言えないと思います。
直前期だけに、信頼できる塾・個別・家庭教師の先生にしっかり問題選別をしてもらう必要があると思います。