共通テスト「数学IA」が難しかった“本当の理由”【大学入試2022】(その1)

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本日の記事はこちら ↓ 著しく難化したと言われる今年の共通テスト「数学1A」についてです。

共通テスト「数学IA」が難しかった“本当の理由”【大学入試2022】
「2年目の共通テストは難しくなる」と以前の記事でも触れたとおり、2022年1月に実施された第2回の大学入学共通テストで出題された数学は、第1回に比べて大きく平均点を下げた。なぜ受験生は得点できなかったのか。その背景にある事情を、大学入試と中...

分量が多いので2回に分けます。

石田 具体的な問題から数学的事象を抽出することや、数学的活動を振り返って本質を取り出し、普遍化したり具体化したりすることは、東京大や京都大といった難関大の2次試験での数学では、従来から求められてきたものです。

石田  数学IAは、前回よりも大幅に難化したと考えられます。100点満点ですが、入試センターの発表によれば、71点取れれば上位4%の最高ランクに入れるということです。私が教えている東大理IIIの受験生でも80点台でした。

難化した主要な原因は、問題文から条件を読み取る、与えられた構想に基づいて思考するといった共通テストが目指す方向性が、前回よりもさらに明確になった出題だったことでしょう。

私も問題を解いてみましたが、かなり骨がありますね。

第1問(配点:30点)

第1問の[1](配点:10点)は、文字式(基本対称式)の問題で、こちらは比較的平易だと思いました。

第1問[2](配点:6点)は三角比についての問題ですが、太郎さんと花子さんのがキャンプ場の地図を見ながら行っている会話を読み解く必要があります。

地図アプリで測定した仰角が16°ということで、普通ならばtan16°を計算すれば良いのですが、水平方向の縮尺が10万分の1,垂直方向の縮尺が2万5千分の1と異なっているため、16°を使うことはできません。

水平方向と垂直方法の縮尺を統一し(水平方向の長さを4倍して)、「tan16°×4分の1」を求めることが必要となります。また、求められたタンジェントの値に基づき、実際の角度を三角比の表から(概算で)読みとる力も試されています。

文章がかなり長いのですが、配点が6点なので、要領よく解く必要があると思いました。

第1問[3](配点:14点)は、前半は図形(正弦定理)、後半は2次関数の問題です。

後半の2次関数の問題では、円に内接する三角形ABCにおいて、辺ABの長さの最大値と最小値(後の2次関数の定義域)を求める必要があります。

この際に、”2AB+AC=14”という条件式から、ABが最大になるのはABが円の直径になる場合、ABが最小になるのはACが円の直径になることに気付く必要があります。

円の半径が3なので、直径は6。これによりABの最大値は6、最小値は4と求まります(4≦AB≦6)。

後は、”AC=2ABー14”から、ACを消去、ADの長さをABの二次関数として表すことができます。

二次関数は上に凸なので、平方完成して、先に求めたABの長さの最大・最小(4≦AB≦6)を定義域の範囲で最大値を求めることになります。

関数の軸は定義域の範囲外なので(左にズレている)、最大値は定義域の左端の点(AB=4)で、AC=4となります。

第2問(配点:30点)

石田 第2問の〔1〕も特徴的な問題でした。前半は、2つの2次方程式の解の個数についての問題ですが、(1)の基本問題を解く中で、解の個数を考えるには2つの方程式の共通解に注意する必要があることに気付くことが、次の(2)を解く鍵になっています。得られた結果を「統合的・発展的に考え問題を解決する」という、共通テストの数学の方向性が表れた問題といえます。

第2問の[1](配点15点)ですが、ア~ウあたりは、「イ」のケアレスミスに注意すれば問題ないと思います。「ウ」は、会話の内容にしたがって計算するだけです。

「エ」は、会話の中の「これ以外にも解()が3つになる場合がありそうだね」というヒントから、片方の方程式が重解を持つ(一方の方程式が2つの実数解、片方が重解を持つ)ことに気づけば、重解をもつ可能性がある2次方程式が”x2-6x+q=0”の方だと判断できます。

「オ」、「カ」は、二次関数のグラフの移動を考える問題です。頂点座標の移動を考えれば良いので難しくはないですが、短時間で効率よく解く必要があります。

後半では、前半の2次方程式の左辺をyと置いた2次関数のグラフをグラフ表示ソフト上で考えることが問われています。「グラフ表示ソフトでグラフの移動を考える」は、試行テスト・プレテストでも出題されていたのですが、これが2次不等式の解についての必要条件・十分条件と絡めて出題された点が目新しかったです。(3)でのグラフの移動の様子の考察がそのまま(4)の正解のヒントなのですが、このつながりを理解できなかった受験生が多かったでしょう。

必要条件・十分条件を問う最後の問題(配点:3点)は、かなり厄介です。この問題は(2つの)グラフの移動を組み合わせれば解ける問題ですが、時間制限がある中で、正解にたどり着けた受験生は少なかったのではないかと思います。

石田 第2問の〔2〕ですね。これも第2回の特徴的な問題でした。ずっと以前は、統計に関する内容は選択問題だったのですが、現在では必答問題となっています。これにはデータの処理や統計を必須知識として学ばせようという流れがあります。

第2問の[2](配点:15点)は、データ処理(統計)の問題ですが、この分野の素養が必須となっている流れから出題された格好ですね。

本問では、データ数なども含めて、図や表を丁寧に読み取る必要があるので、かなり目が疲れました(笑)。私のような年配者(?)にはキツイです。 🙂

(4)は求めた相関係数から正しい散布図を選ぶ問題ですが、表の中の平均値を用いることに気付かないと正解が選べません。また、相関係数0.63がどれほどの相関であるかを図から判断しなくてはならないのですが、それを問うのはやや無理があるように思われます。

最後の問題は、消去法で散布図を選ぶ問題です。相関係数=0.63がどのようなバラツキかのイメージができないと、正解できない問題だと思います。

ここまでが必須問題で配点が60点ですが、

① マークシートで部分点がないこと
② 考えさせる問題もかなりあること

から、ハードな試験だと思いました。

 

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