共通テスト「数学IIB」がセンター試験的発想では対処困難な理由【大学入試2022】その1

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共通テスト「数学IIB」がセンター試験的発想では対処困難な理由【大学入試2022】
前回は、第2回大学入学共通テストで出題された数学I・数学Aについて見た。今回は、数学II・数学Bについて考えてみたい、こちらも第1回に比べて大きく平均点が下がっており、受験生の悲鳴めいた怨嗟の声がSNS上を駆け巡った。なぜ受験生は数学IIB...

今回もボリュームがある(かつ私自身も解いてみた)ので、2回に分けたいと思います。

数ⅠAほどではなかったようですが、数ⅡBもなかなか大変な試験だったようです。1問あたり15分、見直し時間を考慮すると、1問平均12分前後で解く計算になるので、時間との戦いになります。

大問1~大問5のうち、大問1と2が必須問題で各30点、大問3~第5問が各20点で、3問の中から2問を選択する方式でした。

石田 数学IAは、大問4問で70分に対して、数学IIBは60分間で4つの大問を解きます。昨年の第1回は全体的にセンター試験的な問題も多く、何とかなった部分もありました。ところが今年は、会話文をはじめ、設問の理解に時間がかかる問題が増えたため難化したと思われます。

(中略)

石田 こうした会話文のある問題が昨年の1問から今年は3問に増えました。長い条件文の中から、必要な情報を読み出すことが求められる問題もあり、数学IAと同様に、数学IIBも共通テストの目指す方向性がよりはっきりと打ち出された出題となりました。

大問1(配点:30点)

石田 第1問の〔1〕は、平面図形と式、三角関数という複数の単元にまたがる問題でした。会話文の中で2通りの解法が提示され、まずそれぞれの解法の正しい手順が問われています。その上で計算して数値を出すのですが、2通りの解法のうちどちらを選ぶかの判断が必要になります。実は、三角関数による解法の方が計算量は少ないので、こちらを選べると解答時間を短縮できました。「定式化された問題が処理できるか」より「対象をどのように定式化するか」「その過程を比較考察できるか」といった点が問われています。普段から、複数の解法を常に考え、比較する姿勢を持っているか、が問われているといえます。

大問1の[1](配点:15点)では、問題文中の不等式につき、「f(x)=0」と置いた時、円の方程式を表していることが分かるので、平方完成をして円の中心座標と円の半径を求めます。

次に、円外の座標(ー8,0)からひいた円の接線です。接線は2本ありますが、片方は円の半径(5)と中心のy座標(5)からy=0(x軸)であることが分かります。

もう1本の接線については、①太郎さんの方法(判別式の利用)と②花子さんの方法(三角関数=タンジェントの利用)が示されます。

花子さんの方法では、求める接線の傾きが2θになることが分かれば計算は簡単ですが、これに気付かないと、太郎さんの求め方で判別式を使って解くことになります。

4乗が出てくるので(計算に)躊躇しますが、やってみるとkの4乗とkの3乗が消えて、-75k2+100k=0 ⇔ -75k(k-4/3)というシンプルな形になり、k=4/3が求まります。(k=0の場合はy=0となるので、先に求めたもう一つの接線になります。)

なお、この種の問題では最も一般的と思われる「点と直線の距離」の解法を使って、|10kー5|/(√k+1)=5 ⇔ 3k(kー4/3)=0 ⇔ k=4/3と求めることもできます。

石田 指数・対数関数を扱った第1問の〔2〕は、(1)と(2)が対数の定義の理解を問う基本問題です。しかし(3)からが問題で、与えられた太郎さんの考察を理解し、その方針に沿って考えることが求められています。自分で自然に考えた方法で答えを出すのではなく、他の人がどう考えたかを理解する必要があるのです。この太郎さんの考察の理解が、単に表面的に文面を読んでいるだけでは大変だった。自分の手元でグラフを書きながら理解する姿勢がないと難しいでしょう。読解力を試される問題です。

さらに(4)では、(3)の結果を具体的な問題に適用することが求められています。これもまた、問題を考察して得られた結果を「統合的・発展的に考え問題を解決する」という共通テスト数学の目指す方向性がよく表れた問題といえるでしょう。

第1問[2](配点15点)は、問われている内容は恐らく対数を学び始める頃に学習する内容ですが、意外に手薄になっている部分かもしれません。

よって、題意の把握に少し戸惑うかもしれません。

意味している内容が分かれば、底(a)が①a>1(増加関数),②0<a<1(減少関数)に注意して、グラフなどを用いながら解釈すれば良いことが分かります。

(4)が少し面倒ですが、底と真数の大小関係、底のPが1未満であることに注意すれば、正解できると思いました。

大問2(配点:30点)

 

石田 ここでも、共通テストの目指す方向性がよく表れていたと思います。(1)は関数が表すグラフを選ぶもので、定性的な把握ができているかを問う問題でした。

(中略)

(2)のポイントは、3次関数のグラフと直線が接するときには、連立したときの3次方程式に“重解”が現れるという見方ができているかにありました。「接線といったら微分だ」のように手法を表面的に暗記していたのでは対応できません。日常の演習などで単に答えを出すだけでなく、解法を振り返って深める姿勢を持っていないと、スムーズには解けなかったと思います。

(3)は、方程式の解の個数と定数との関係についての論理を問う問題です。数学Iで学ぶ必要条件・十分条件に関係する内容なのですが、この論理に関する理解は数学全体で常に問題となるものです。そういった点について日頃から意識できていないと、ここで手が止まってしまったでしょう。

第2問[1](配点:15点)ですが、(1)のグラフの形を問う定性的な問題が面白いですね。

3次の係数がプラスなので、グラフの基本的な形は、0番から2番までに選択肢は絞られます。次に「微分して0」の解釈です。a=0のとき、f´(0)=0なので、x=0のときだけ極値を持ちます。なので、グラフの1が該当します。一方、a<0の時、f´(x)>0(常に正)なので極値は持ちません。よって、0番のグラフになります。

一般的には、①微分して0と置く、②極値(最大・最小)を求める、③増減表を描く…という流れで問題を解くわけですが、今回はその前段階を問うような問題でした。

一方、(2)の後半で、3次関数にx軸と平行な接線をひいた時にできる2個の共有点のうち、接点でない方の座標(x座標)を求める問題はなかなか面白いですね。

3次関数と直線の方程式を連立させて…などと考えると解ける気がしませんが、3次関数と直線がx=rで接している → x=rで重解を持つとわかれば、3次関数と直線を連立させて「=0」と置いた3次方程式が(x-r)(x-q)=0という形になるので、係数比較でrの値(x座標)が簡単に求まります。

石田 こちら(注 第2問[2])も必答の問題ですが、時間内に処理するには、全体的に高いレベルでの理解が必要だったと思います。

前半は、2つの3次関数に囲まれた領域の面積についての問題で、「2つの関数値の差」を関数として捉えるという見方ができていれば、誘導にスムーズに乗れます。これも日常の演習の中で、問題を振り返って数学的に考察する経験を積んでいるか否かで差がついた問題だと考えられます。

後半のS-Tの値についての考察では、目の前の計算をただ力任せに行うのではなく、計算の過程全体を先に見渡してから個別の計算を行うといった、「見通しを持った計算力」を身に付けていない場合は、そもそも何を聞かれているかが理解できなかったのではと思います。

大問2[2](配点:15点)の前半は、文字を含む2つの3次関数に囲まれた領域の面積を求める問題で、こちらは典型的な積分計算です。

積分区間においてどちらの関数が上か(下か)が的確に判断できれば、意外に解きやすい問題だと思います。

また、”SーT”の計算については、計算簡略化のための積分区間を結合したり、S=Tとなるtの値を求めるには、3次式の因数分解を要領よく行う必要があります。

所感

第1問、第2問ともに、教科書の最初の方に書いてあることについて、視点を変えた問い方をすることで、深い理解ができているか否かを確認することを意図した問題のように思います。

大抵の場合、こうした基礎的な理解(導入段階の学習)は最低限で済ませ、あとは応用問題を含めて沢山の問題演習をすることで習熟度のアップを図るというのが受験数学の学習の主流になっているように思えるのですが、今回の共通テストでは、敢えて手薄になっている部分を突いてきたという印象を持ちました。

また、数1Aでも感じましたが、時間的制約がかなり大きい。数ⅡBの試験時間は60分ですが、最低1問20分、合計で80分は欲しいところですね。

問題文の対話文がヒントになって思考時間を短縮できるのならば良いのですが、逆に、太郎さんや花子さんの意図を咀嚼するのに時間がかかったりするケースもあるので、意外に時間がかかると思います。

結果的に、普段学習している問題とかなり趣向の違う問題に、戸惑った受験生も少なくなかったのではないでしょうか。

 

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