月刊誌の「中学への算数」をはじめ、中学受験算数(もちろん、中学数学や高校数学)において最高峰とも言える教材を出している東京出版から出ている「算数プラスワン問題集」。
出版から既に20年以上経過している問題集ですが、未だに根強い人気を誇っています。
とりわけ、難関校を目指すご家庭にとっては、「気になる問題集」と言えるのではないでしょうか。
我が家の中学受験時代を思い起こすと、6年生の今頃は、単元学習を一通り終え、総復習に入り始めた頃だったと思います。そして、その頃使っていた算数プラスワン問題集のことを思い出しました。
中学受験時に使用した教材の大半は処分してしまいましたが、(子供ではなく私の?)お気に入りだった数冊の教材は手元に残してあります。算数プラスワン問題集もその中の1冊。
私もGWで少し時間ができたこともあり、今回から2~3回に分けて算数プラスワン問題集の特徴や利用上の注意点などを私見を交えつつ紹介したいと思います。
収録されている問題
算数プラスワン問題集はいわゆる「一行題」問題集です。
「一行題」は「単問」とも呼ばれますが、基本的に、問われているポイント(論点)を1つに絞った(問題構造が)シンプルな問題を意味します。
一行題は論点自体はシンプルですが、「簡単に解ける」問題という意味ではありません。
算数プラスワン問題集はむしろ(一般的視点では)難度はかなり高目の問題集と言えます。
したがって、主な利用対象者は「難関校を目指す受験生」、「算数が得意な受験生」と考えられます。
問題集の構成
算数プラスワン問題集は4部構成となっており、収録問題数は第2部から第4部の合計で422題となっています。
第1部 「基礎講義」
冒頭10ページほどは、受験算数における重要テーマ(解法)の解説ページになっています。
「基礎」講義と銘打ってしますが、まったく易しくないです。 😯
問題を少し高い視点で俯瞰したもの(=抽象化・一般化したもの)になっているので、使うにしても(問題集をマスターした後の)最終段階とか、中学受験のプロの方に指導してもらうといった形でないとなかなか厳しいでしょう。
問題集の「使い方」でも指示されている通り、「基礎講義」は飛ばしてよいと思います。
第2部 「問題編」
「文章題」、「図形」、「計算・規則性・論理など」という3つの大区分で、全308題の一行問題が収録されており、本書の中核です。
概要は以下の通りです。大区分と中区分の問題数を参考までに書き入れました。
大 区 分 | 中 区 分 |
Ⅰ 文章題 (01~12) (96題) |
和と差(1)(2) ➡ 16題 |
割合と比(1)~(5) ➡ 40題 | |
速さ(1)~(5) ➡ 40題 | |
Ⅱ 図形(01~14) (106題) |
平面図形(1)~(5) ➡ 40題 |
立体図形(1)~(6) ➡ 44題 | |
動く図形(1)~(3) ➡ 22題 | |
Ⅲ 計算・規則性・論理など (01~14) (106題) |
数の性質(1)~(3) ➡ 24題 |
規則性 (1)~(4) ➡ 28題 | |
推理・論理(1)~(5) ➡ 38題 | |
場合の数(1)(2) ➡ 16題 | |
合 計(308題) |
第3部 「テーマ演習」
やや発展的な12のテーマについて、全部で74題が収録されています。
概要は以下の通りです。
概要は以下の通りです。
注釈として、受験算数で一般的と思われる単元分野を追記しました。
テーマ | 問題数 | 注 釈 |
1 周回運動 | 6題 | 図形(点の移動) |
2 ダイヤグラム | 6題 | 文章題(速さ) |
3 折り紙 | 8題 | 図形(平面図形) |
4 影の問題 | 6題 | 図形(平面図形) |
5 最短距離と反射 | 6題 | 図形(平面図形) |
6 立体表面上の最短距離 | 6題 | 図形(立体図形) |
7 分割・構成Ⅰ(平面) | 4題 | 図形(平面図形) |
8 分割・構成Ⅱ(立体) | 6題 | 図形(立体図形) |
9 立体の切断 | 6題 | 図形(立体図形) |
10 正多面体の展開図 | 8題 | 図形(立体図形) |
11 三角数 ~ 六角数 | 6題 | 規則性 |
12 デジタル表示 | 6題 | 規則性 |
合計 | 74題 |
第4部 「入試精選問題」
最後に、実際の入試問題が40題掲載されています。
分野名の記載がない
上記の2部・3部の問題構成をご覧いただけるとわかる通り、(4~5年生の)単元学習を行っている段階の塾のテキストと違い、「つるかめ算」、「食塩水」、「旅人算」といった分野名は出てきません。
これらの問題はそれぞれ、「和と差」、「割合と比」、「速さ」といった項目(上の表の中区分の中)に含まれています。
イメージとしては、(単元学習を行っている)「予習シリーズ」の小4~小5の章建てではなく、予習シリーズの6年上巻の章建てに近いです。
本書の利用法には次のように書かれています。
したがって、各分野をひととおり学習したみなさんは、今度は、何を使って解く問題なのかを意識した復習・点検を進めてほしいわけです。この本は、こうした理由から、普通の問題集の目次や各タイトルにあるような解き方を連想させる分野名(相当算・消去算・比・集合など)はすべてなくしました。
端的には、単元学習が一通り終わった段階で(忘れている項目や弱点を)点検・復習する問題集と言えると思います。
充実した索引
算数プラスワン問題集には目次はありますが、非常に簡略です。
逆に、巻末索引がとても充実しています。索引には大きく分けて、次の3つがあります。
[A]分野による索引
[B]テーマによる索引(その1)(その2)
[C]解法による検索
[B]テーマによる索引(その1)(その2)
[C]解法による検索
[A]は、塾の単元学習に対応した索引です。
和差算、つるかめ算、仕事算…といった項目でまとめられているので、これらの問題がプラスワン問題集の何ページのどの問題に対応しているのか、探す場合に便利です。
和差算、つるかめ算、仕事算…といった項目でまとめられているので、これらの問題がプラスワン問題集の何ページのどの問題に対応しているのか、探す場合に便利です。
[B]は、テーマを絞った問題検索に便利な索引です(我が家では利用しませんでしたが)。
[A]の索引と被っている場合もあるし、もう少し細かい区分(例:歩数と歩幅)で問題が探せるようになっています。
[C]は解法別の索引で、「全体を①とする」、「同じ立体をたして考える」、「三角定規形を見つける」、「試しに書きながら規則を見つける」といった解法別の索引です。
こちらも我が家では使いませんでしたが、改めて見てみると、仕上げ段階で解法パターンが身についているか(≒瞬時に想起できるか)否かチェックするのに便利だと思いました。
閑話休題
「算数プラスワン問題集」は、基本的に「難関校を狙う受験生が、単元学習を終えた後、本格的な入試演習に入る時期(10月頃)までに利用する問題集」と言えます。
この記事を書くにあたって、パラパラと過去の入試問題をめくっていたところ、2021年のある中学の入試問題で「プラスワン問題集」とそっくりの問題(数値まで同じ問題)があったので少々驚きました。
実際の入試問題にそのまま採用されるほど、質の高い問題が収録されているということでしょう。
したがって、志望校によっては、過去問演習と並行して進めるという使い方もあるのかもしれません。

今回は以上です。
次回は(私見による)使用上の注意点を扱う予定です。