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私立と国公立の進学校に通う3人の高校生(高校2~3年生)の座談会形式の記事です。
ただ海外をまねしてもうまくいかない
A ちなみに私は3歳から7年間英会話に通っていましたが、ほぼ効果はなかったです(笑)。むしろ小さい頃から英語に触れていたので英語が嫌になってしまいました……。
B それもありますよね。幼い頃から英語に触れて英語が大好きになっている友人もいますが、嫌いになってしまっているケースもよく見ます。
英語に限りませんが、早期教育の最大のリスクが、本格的に学ぶ時期に入る前に失速(脱落)してしまうことですね。
「英語を早く始めたが嫌いになってしまった」、「算数・数学を先取りしていたが、途中で分からなくなって嫌になってしまった」…。
中学受験の準備自体が早期教育なので、こうしたリスクが内在していることを認識しないといけないと思います。
一方、どんどん先に進むことで、さらに楽しくなって大好きになるということもあるわけです。
この辺りはお子さんの様子を見ながら進めるということになるのかなと思います。
なお、私の頃は中学入学時に英語はゼロスタートでした。
そして、入学当初は(私を含めて)クラスの8~9割は「英語が好き」という状態だったと思います。英語は全然できなかったですが、「新しい科目への期待」、「面白そう」、「恰好良さそう」という感じでした。
ただ、現実は厳しい。
学年が進むにつ入れて段々興味が薄れていき、嫌いになる生徒が増えていくわけですが…。
なので、早期教育で嫌いになるくらいなら、(本格的に学ぶまで)むしろ何もしない方が良いと思います。
学校の授業は苦手を植え付けている
―好きになれるか、なれないかは大きいですよね。
C かなり大きいと思います。「好きこそ物の上手なれ」というように、好きだからこそもっとできるようになりたいと思えるようになり、英語が得意になれると思います。
「好きこそものの上手なれ」
英語に限りませんが、結局これに尽きますね。
英語を含めて勉強全般に当てはまりますが、「好きでやる」か「必要に迫られてやる」のいずれかですからね。
恐らく、英語を勉強している大半の中・高生は、「高校受験・大学受験・定期試験に必要だから」という理由(=必要に迫られてやる勉強)と思います。当時の私もそうでした。
英語が好きでない人が英語力を上げようとした場合、「必要性」がどれだけ切実なものかがポイントですね。
受験生ならば「石にかじりついても○○大学に合格したい」とか、社会人であれば「海外赴任が決まって英語から逃げられなくなった」とか…。
私自身も社会人で英語をやり直した口ですが、「海外大学院に留学したい」という強い想いがあったからです。
したがって、「英語ができるようになれば良いな。」程度の弱いインセンティブでは英語は身につきません。
「英語が好き」か「英語の勉強に対する強いインセンティブがあるか」のいずれでしか英語は身につかないと思います。
私自身は英語が特に好きではなく、「海外留学という強いインセンティブ」である程度の英語力を身につけることができたのですが、「英語が真に好きな人には敵わないな」と最近つくづく思います。
なので、「英語が好き」というのが恐らく最強だと思います。
英語を「話せるようになる」授業を
―英語を「話す」という点では、皆さん自信はありますか?
C 私は3歳から13年間、習い事で英語をやってはいたので、英語へのハードルは低いと感じています。ですが、それでも自分の英語力の低さを実感します。 楽しいとは思うのですが、実際に人と話してみるとすぐには文章が思い浮かばなくて……。話している途中で何度も詰まってしまいます。
例えば出川哲朗さん。
無茶苦茶な英語ですけど何とか伝わってしまいますよね。
もちろん、英語学習者のお手本にはなりませんが、「伝えたいという強い想い」が重要だという良いお手本です。
長くにわたりNHKラジオでビジネス英語番組を担当していた杉田敏先生も、以下のようにおっしゃっています。
「英会話の本を何冊買いこんで丸暗記しても実際の会話はそのとおりには進行しない、ということです。重要なのは話をする『内容』を持つということです。」
「伝えたい思い」と「伝えたい内容」がどれだけあるのかがポイントとなります。
多少つまっても、多少ブロークンでも、この2つがあれば何とかなります。
逆に、「ちょっと気の利いたことを言おう」とか「洒落た表現を使おう」とか、「文法的に間違ったら恥ずかしいな」とか分不相応なことを考えるとうまくいきませんね。
杉田敏先生はさらに以下のように指摘します。
日本で英語を勉強しようと思ったら、なんとかして少しでも英語を使う時間を作り出すことです。使わないと錆びてしまいますから。私も出張で英語圏に行って毎日英語漬けの日を送ると、滞在がたった1 週間ほどであっても、少し英語の力がアップするのを実感します。やはり英語と触れている時間が重要だということですね。
実際、ある程度の英語力(ノンネイティブが海外有名大学(院)に入学許可される最低レベル)を身につけるには、(経験したことがない人から考えると)想像をはるかに超えた労力が必要です。
(帰国子女でない)普通の高校生の場合、高1~高3まで平日で2~3時間(休日は5~6時間)英語に触れることによって到達できるかどうかというレベルだと思います。
他の科目の勉強をしたり、部活をしたり、課外活動をしたり、あるいは友人と交流したり…やることが沢山ある高校生活の中で、英語を勉強と思って取り組んでいるようでは到底無理。
英語が大好きで趣味の一部位にならないと。
これ以上、国に振り回されたくない!
―大学が英検やTOEFLなどを受験に取り入れ始めたことについてはどう考えますか?
B 個人的にはいい動きかなと思います。ですが受験料が高く負担になってしまうので、あれは選択肢の一つかなと思います。
TOEFLの受験料は日本で受験するとUS$235(約25,800円:2021年7月30日のレート)ですから、入試の代用として使うには無理がありますね。
私が社会人で大学院留学した時もTOEFLの受験料はかなり高かったので、結構慎重に受けていましたから。
個人的には、「英語の入試問題を作ら(れ)ないのなら、無理して英語の入学試験を課す必要はないのでは?」と思いますけど。
英語以外に特色ある教育はいくらでも打ち出せるし、「英語は無試験で、大学入学後の4年間で徹底的に鍛え直します」みたいな大学があっても良いと思うのです。
横並びである必要はまったくないと思うのですが…。
あと、大学に入って英語を勉強するなら、TOEFLの洋書問題集をやるのは超お勧めですね。受験料は高いですが、洋書問題集は安くて品質が高いものが多いです。
私も当時、米国のAmazonから問題集(TOEFLとGMAT)を大量購入しましたが、全部で多分10~15万円位だったと思います。
TOEFLだけなら5万円分も買えば、相当量の演習ができると思います。
―2019年は、大学入学共通テストに民間試験を利用する方針でしたが、一転して取りやめになりましたね。
B 大学も国も試行錯誤ですよね。本当に大変だと思います。
A そうですよね。ただいろいろ試すのはいいですけど、その分、振り回されるのは嫌ですね。
C 突然方向転換されるのは高校生としては迷惑だなと感じます。
これは本当に迷惑ですね。
変えること自体が目的化していましたから、変更にあたっての「細部の詰め」が全然できていませんでしたね。
高校生や親御さんにとっては、振り回された数年間でした。