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森上 中学受験は、中高6年間という大事な時期に、ご縁のあった学校で、何の利害関係もないフラットな関係を結ぶ機会を与えてくれるものです。ともすれば分断が進む世の中で、こうした中間組織での経験は非常に大切なものです。
石田 受験を成長の過程の中で捉えることは大切だと思います。受験勉強の最中ではそれ自体が目的になってしまうのはある意味仕方ないのですが、でもそこで完成形に到達する訳ではない。育ち方も子どもの特性もさまざま。個々人で大きく異なります。あとでゆっくり伸びていく子だっています。中学受験は、中高一貫校という中間組織に入るためのはじめの一歩。そこから先で、子どもたちはいかようにも変わっていけます。
確かに、小学校(6年)、大学の学部(4年)を含めて、中高一貫校というのは、「6年間でほぼ全員が入れ替わる中間組織」という位置づけになりますね。
中高一貫校出身でない私のような人間は、中間組織としての公立中学(3年間)、私立高校(3年間)を過ごしたわけですが、実際には入学して学校に慣れるまでの期間があったり、高校や大学入試のための期間等があったりします。実際には3年間もないわけで、かなり慌ただしい。
その点、中高一貫校は高校受験がないため、より長い期間を中間組織で過ごすことができます。この点は大きなメリットだと思います。
ただし、メリットもあればデメリットもあるわけで、中高一貫校の場合、3年間でリセットできないので、学校生活等の環境面で合わないと辛い部分もあるように思います。
校風との相性の問題もあるでしょうし、生徒本人の順応性の要因も大きいと思います。
充実した中高6年間を過ごすことができる学校を選ぶことができれば、(結果論ではありますが)中学受験もうまくいったと言えるのではないでしょうか。
石田 大学受験につながる大切な内容が、受験算数の中にたくさん含まれています。でもそういった将来につながる、この時期に身に付けていないといけない基本が弱くなっていることも感じています。
例えば図を書くという作業。いま主に中高生を指導していますが、10年前と比べても図が書けなくなっています。三角形を書くように言うと、おにぎりの形を描きます。「それ以外の三角形も」と言うと、何を言われているのか分からない子がいます。自分が書いた三角形以外にも、色々なバリエーションがあること自体がカラダの中に入ってきていません。そういった子は、図形問題で正しく条件を表す図を書くことができなくなります。
受験算数自体、一言で言えば先取りです。
受験算数は、中学範囲にとどまらずに高校範囲まで領域を広げてきていますから、当然、大学受験にもつながっています。
特に、難関校が好んで出題する「整数」や「場合の数」は高校数学分野の数学Aで、「数列」は数学Bで扱う範囲なので、考えてみるとものすごい「先取り」になっています。 🙂
したがって、小学校範囲の計算の基礎(分数・小数を含めた四則計算)を入塾までに固めれば、それ以上の先取りは(中学受験塾でやるので)基本的には不要と言えます。
一方、受験塾の学習スピードはかなり速いので、ゆっくりやらないと身につかない領域が手薄になってしまう懸念もあります。
その最たるものが「作図」でしょうか。
以前の記事でも取り上げましたが、作図というのは実際にモノを見たりさわったりする経験(五感を活かした体験)をしつつ、自分で色々試行錯誤をしながら描いてみないとなかなか上達しません。
しかし、中学受験塾に通ってると、4科目同時並行に進んだり、また算数なども多くの問題をこなさなければならないので、こうしたスローな勉強に割ける時間があまりない。
もちろん、図形の問題を沢山解くことである程度の効果はあるでしょうが、それよりも、実際に立体や図形を(工作用紙や折り紙で)作ったり、立体に触れる経験を持ちつつ、遊びの中で身につけていく方が大切だと思います。
このあたりは、比較的時間的に余裕がある小4~小5の間で、ご家庭で補強する必要があるかもしれません。