共通テスト「数学IA」が難しかった“本当の理由”【大学入試2022】(その2)

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本日の記事はこちら ↓ 著しく難化したと言われる今年の共通テスト「数学1A」についてです。

共通テスト「数学IA」が難しかった“本当の理由”【大学入試2022】
「2年目の共通テストは難しくなる」と以前の記事でも触れたとおり、2022年1月に実施された第2回の大学入学共通テストで出題された数学は、第1回に比べて大きく平均点を下げた。なぜ受験生は得点できなかったのか。その背景にある事情を、大学入試と中...

今回は2回目で、選択問題(3問のうち2問選択)を扱います。

第3問<選択>(配点:20点)

石田 プレゼント交換会で、自分以外の人の持ってきたプレゼントを全員が受け取れる確率を考えさせる問題で、これは「完全順列(撹乱順列)」といわれる有名問題です。必ず教科書や問題集に載っている問題なのですが、実は数学的にさまざまな深め方が可能な問題です。「これはこう解く」という解き方を1つ教わって終わってしまうのではなく,いろいろな見方をして理解を深めるといった数学的活動を経験していると、問われていることの意味が理解しやすかったでしょう。

まず(1)で人数の少ない場合から順に考えさせ、そこで得られた知見を(2)で活用することが求められます。さらに(3)では、(1)(2)の経験をもう一段深めて使うことが想定されています。

第3問(配点:20点)は、確率の問題です。プレゼント交換を行い、1人でも自分が持参したプレゼントを受け取ったらやり直し。全員が違うプレゼントが受け取った段階で交換会が終了するという問題です。

まずは、問題文の指示に従い、2人 ➡ 3人 ➡ 4人と少ない数から考えて、問題構造の理解を深めていきます。この「小さい数で考えてみる」というのは中学受験の算数でもかなり重要なアプローチです。

最終的には5人のケースまで考えることになりますが、人数が増えてきた場合、場合分けを行って数え漏れがないよう注意深く計算するのがポイントでしょうか。5人のケースまでできれば、20点中17点ゲットできます。

なお、この問題は確率の問題ですが、「何通りあるか?」という問題であれば、中学受験でも出題される可能性もある問題だと思います。

最後は条件付確率の問題(配点:3点)ですが、「A,B,C,Dの4人が自分以外のプレゼントを受け取る場合」として、①Eだけが自分のプレゼントを受け取る場合、②5人全員が違うプレゼントを受け取る場合の2パターンを考える必要があります。

限られた時間で問題を解く必要があること、マークシート方式なので部分点がない(1つでも数え漏れや数え間違いがあったら不正解になる)ことから、かなり厳しい問題だと思いました。

第4問<選択>(配点:20点)

石田 この問題は、完答するのが大変だったと思います。共通テストが目指す方向性に沿った出題であることは理解できるのですが、やや力が入りすぎているようにも思えます。

1次不定方程式の(1)は基本問題ですが、(2)は難関大の2次試験で出題されてもおかしくない水準の問題です。

第4問はかなり厳しい問題ですね。
(1)(配点:7点)は”625(=5)=16・39+1” ➡ ”5・1-2・39=1”
であることが確認できれば(問題構造が分かるので)、解答できると思います。

ただ、(中学受験でも)「整数問題」は実際に手を動かさないと問題構造が分からなかったりするので、この問題も手を動かしながら考えてみることが大切だと思いました。

(2)(配点:2点)も625=5より、(1)の関係式(54=24・39+1)の両辺を2乗して、58=(24・39+1)2=28・392+2・24・39・1+1=28・392+25・39+1⇔ 5=28・39+25・39+1なります(m=39)。

(3)(配点:6点)では、”xー2y=1…①から、誘導にしたがい、5ー625=55・2・n(nは整数)として表せることが分かれば、x=125と解けると思います。

一方、x=125を①式に代入してyを求めることになりますが、計算が結構大変です。55と25が互いに素なので、計算簡略化が難しいですね。

前問で得た、”58=28・m+25m+1(m=39)”を使うと、若干計算は楽になります。

ここまでで20点中15点。個人的には限られた時間では、「ここまでが限界かな」と思いました。

(4)(配点:5点)では、114=14641,”114=24×915+1…①” が成立することを確認し、(2)でやったように、①式の両辺を2乗して、”118=28・9152+25・915+1 … ②”を得ます。

ここで、(3)でやった、5ー625=55・2・n(nは整数)を想起します。

5を11に置き換えて、115xー118=115・25・p(pは整数)となります。118を移行して両辺を115で割ると、x=113+25・p=113+32p

xは最小の正の数なので、x=113+32p>0 ⇔ p>(-1331)÷32 ⇔ P>-41.5…より、P=-41。p=-41をx=113+32pに代入して、x=1331+32・(-41)=19

最後は、115xー25y=1に、x=19を代入してyを求めるのですが…。

さらに、最後のyの値を求める計算が(11の5乗×19-1)÷(2の5乗)といった大変な計算を強いるものであったこともあり、難関大に合格する実力のある受験生でも時間内に処理し切るのは大変だったと思います。

第5問<選択>(配点:20点)

石田 第3問、第4問と比べて、第5問の平面図形は圧倒的に処理量が少なかったため、有利だったと思います。平面図形は一般の入試ではあまり出題されないので、高校の授業でも重点を置かないことが多いのですが、この分野の学習を重視せよと誘導しているかのようにさえ見えます。
とはいうものの、共通テストでは原則として図が与えられていません(これはセンター試験でもそうでした)。したがって平面図形の問題では、問題文を読みながら自分で図を書き、出題者の想定している解法の筋道を慎重に探ることが必要となります。読解力と、論理的な思考力が要求されます。
(1)では、メネラウスの定理の形をきちんと自分で作り、その結果をよく観察して誘導に従えば綺麗な結果が得られるようになっています。
(2)では、新たに与えられた条件を読み解いて、相似または方べきの定理が適用できることに気付くことが必要で、さらに、(1)の結論を利用することに気が付くことがポイントになっています。
(3)では、(1)の解法を振り返り、具体的な数値であったDE/ADの値を一般化することが求められていることを理解すれば、すぐに正解が得られるようにできています。この問題もやはり、数学的活動を振り返って本質を取り出し、次の具体的な問題に適用するという、共通テストが目指す方向性に沿って作られた問題といえそうです。

そもそも、メネラウスの定理とか忘れているし、この問題に関してはノーコメントで。 😯

とは言え…少しだけコメントをしたいと思います。

「メネラウスの定理」とかは最近では中学受験塾でも教えたりするようですし、相似を使う部分があったりするので、難関中を目指す小学生なら(部分的には)解けそうな問題です。

しかし、この問題は文章だけで図形が描かれていません。つまり、文章を読んで、自分で図形を描かなければならないということです。

特に、(2)の図形に関しては、4つの点が円に内接するよう点Fを定めて図形を描くというのは、かなり難しいのではないでしょうか。

問題を解く以前の問題として、問題文の条件に沿った適切な図を描けるということが重要で、作図力が問われていると思いました。

 

中学受験との関係性を考える

今回の数1Aの共通テストを見た限りですが、中学受験あるいは中学校における算数・数学あるいは他教科を通じた取り組みとして、以下の5つがポイントとなるように思いました。

 

① 問題文を読み取る力 ➡ 読解力の重要性
② 問題文を読み、自ら図形を描くこと ➡ 作図力の重要性
③ まず小さな数で問題構造を把握すること ➡ 試行錯誤の重要性
④ 基本事項の理解を深める勉強姿勢(=算数的・数学的活動)
➡ 解放パターン暗記に留まらない勉強の重要性
⑤ 複雑な計算をこなせる計算力の重要性

気になったこと

今回の共通テストの方向性として、「思考力」重視であることは間違いないと思います。

また、数1A領域で扱う「整数」、「統計」、「確率」といった領域は(社会に出てからも)今後ますます重要になってくると思われます。

整数問題は、今後ますます進展するコンピュータ分野においても重要ですし、約束事が少なく、問題のバリュエーションも多いことから、最近では難関中学の入試でも好んで出題される領域になっています。

ただ、今回の整数問題(特に、最後の問題)のように、煩雑な計算を要求され、計算そのものに時間がかかるとすると、本来は思考に使うべき試験時間が、単純な計算作業に割かれているのではないかという懸念があります。

さらに、「統計」分野は、実務においては表計算を用いて処理されるのが一般的。実用性という観点からは、ExcelのANOVAの読み取りなどを問う方が面白いと思うのですが、さすがに高校生には厳しい。かといって現状のような「手計算」では(実務との間で)大きなギャップがあります

一方で、試験時間は限られているので、制限時間内で問える内容には限界があります。
あれもこれも盛り込めば受験生の負担はさらに増加し、結局は、短時間で効率的に解く技術(=受験テクニック磨き)に拍車がかかる懸念もあります(もちろん「試験」である以上、ある程度のテクニックは必要ですが)。

思考部分を増やしたら、むしろ計算負荷は軽くするというように問う内容のバランスを考えないといけないと思うのです。

ということで、大学入試においては、電卓(100均で買える程度のもの)を貸与することを考えても良いのではないかという気がしました。

 

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