「最上位クラス」以外は詰め込み型に陥る…中学受験が”暗記だらけ”になってしまった残念な理由

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知識と思考力の関係とは?

難関校の入試を見てみれば一目瞭然だが、近年の中学入試は知識だけを答えさせる問題はほとんどなく、思考力を見る問題が増えている考える上で、必要となるのが知識だ。

 

思考力を身につけることが重要であることは、みんな分かっている。だが、思考力とはそもそも何を指すのか、どうやって伸ばしていくものなのか分かっていない人は少なくない。私は、思考力とは知識の上に成り立つものだと考える。知識があってこそ、考えることができるということだ。

「思考力も知識も両方必要」という総論には恐らく反論を示す人はほとんどいないと思います。

しかし、「思考力とはそもそも何なのか?」、とか、「思考力を伸ばすにはどうしたらよいのか?」、という点において一致した見解はないように思いますし、議論は延々と続くでしょう。

それはそれで良いと思います(正解はないでしょうから)。

しかし、こうした問題が「入学試験」という、期限付きで制限時間のある局面において登場すると、悩ましい問題となります。

探求型学習?  アクティブラーニング?

近年、探究学習をウリにする探究型の塾が人気を集めている。文部科学省が定める学習指導要領に探究学習の重要性が述べられていることも影響しているのだろう。探究塾では子供たちの興味を喚起し、思考力を伸ばすことに重きを置いている。

(中略)

しかし、探究塾の効果は、指導者の力量によって大きく左右されることを知っておかなければならない。良い指導者は、子供が興味・関心を持つように、テーマを熟考し、下準備も念入りに行う。

「探求型学習」とか「アクティブ・ラーニング」とか何やら新しい用語が出てきて、「今までと何がどう違うのだろう?」と思ったりします。

いずれにせよ、指導者の力量(=入念な準備)に加えて、①生徒の興味の対象、②生徒の知識や学力レベルなど、様々な前提条件をクリアしていないと期待した効果は出にくい

例えば、昆虫に対する深い学びを意図した探求学習を企画しても、そもそも「虫が大嫌い」な子供には、単に気持ち悪いだけで全く面白くない可能性が高い(もちろんその講義をきっかけに、昆虫好きになる可能性もあるが…)。

また、学力レベルがある程度揃っている状態でないと、既にわかっている子にはレベルが低過ぎて面白くなかったり、逆に、一定の学力レベルにまだ到達していない子の場合、分からなくて面白くなかったり、ということが起きる危険性があります。

しかし、昆虫は嫌いでも植物に興味があれば、家にある植物図鑑を見たり、散歩中に花を観察したり、あるいは(現在であれば)インターネットの動画や画像を見たり、親御さんと会話をする中で、植物に関する知識や興味を深めていくこともできるわけです。

探求学習の基本は、子供自身の興味ある分野を深めていくことだと思います。その意味では個別性が非常に強い

集団型の探求型学習はかなりハードルが高いですが、(子供自身のペースや興味に応じて可能な)家庭でできる探求型学習の方がはるかにハードルが低いと思われるわけです。

「探求学習」や「アクティブ・ラーニング」など、様々なネーミングの学習スタイルが提唱されますが、最近考案されたものではなく、以前からあったものの言い換えに過ぎない。

特別でありがたい学習方法、特別な場を用意しないと実現できない、などと考える必要はないと思います。

中学受験の問題点

一般的に中学受験をするのなら、大手進学塾に通う。大手進学塾では、受験に必要なカリキュラムが充実しているからだ。毎年入試が終われば、即座に入試問題を研究し、翌年のカリキュラムに組み込んでいく。そうやって、徹底的な受験対策をして結果を出してきた。

しかし、塾が入試問題を熱心に研究すればするほど、覚えなければならない知識、教えなければならない解法が増えていく。長年、中学受験の指導をしてきた私から見ると、今の中学受験塾は教えることが多すぎる。あまりにもたくさん覚えなければならない知識があるので、子供たちはそれをこなすだけの勉強になっている。それが、今の中学受験の一番の問題点だ。

中学受験塾は中学の入試問題を研究して、塾の教材に載っていないパターンの問題が出ると、その問題を教材に取り入れ、解法パターンを教える。

翌年、中学が塾の教材に載っていない問題を作成すると、各塾はその問題を教材に取り込んで解法パターンを教える。

こうした「いたちごっこ」が続いた結果、現在の中学受験では覚える内容がどんどん増えていると言えます。

例えば、Aという幹のテーマ(概念)があり、10年前はa~aまでの5つの派生論点の出題実績があった。したがって、10年前のテキストには、Aとa~aだけが掲載されていた。当時は、それほど詰め込まなくても、Aというテーマを追求することができていた。

ところが、その後Aに関する様々な派生論点が登場し、都度、a,a,…と掲載される問題が増えていく。去年の入試でも新たな問題論点が出題された。よって、これをa10としてテキストに加える…と。

結果、今年のテキストにはAとa~a10が掲載されることになり、10年前の約2倍の分量になります。

そうなると、Aについてしっかり学ぶ時間がなくなり、a1,a,…,a10,…の派生論点を表面的に演習するだけで手一杯になってしまう。その結果、「何かよく分からないけど、この問題は面積図を使えば解ける」みたいな解法暗記に留まってしまう。

しかも、派生論点(a,a,…,a10…)が増えていくだけでなく、幹となる論点も増えていくわけです。例えば、従来A~Mだった幹の論点が、N,O,P…と増えていく。これらを網羅的に追っていけば、大変になる一方です。

こうしたことは、算数だけでなく、理科や社会など他教科でも見られると思います。

また、大手進学塾でも塾によっては、最上位クラスでも思考型の問題をパターンで叩き込ませるところもある

世の中には非常に聡明で、「1を聞いて10を知る」お子さんもいます。

そうしたお子さんの場合、先の例で考えると、Aを深く理解し、あとはaとaあたりをやれば、a~a10について、あるいは、(まだ見ぬ)a11とかa12にも問題なく対応できてしまう。

そうしたお子さんにとっては、沢山の問題演習をする必要がないわけで、勉強時間も信じられないほど少ない。

しかし、そうした(ある意味天才肌の)お子さんはごく少数。塾の上位クラスであっても、「まじめな努力型」のお子さんの方が多いと思われます。

そして、そうしたお子さんに沢山のパターン演習を行わせることで、難関校の合格実績を高められることを(長年の経験から)塾は知っているわけです。

結果、大量演習で様々なパターンに対応できるようにすることが、(塾の考える)難関校合格へのルートになるわけです。

一つひとつの解法は知識で、何を手がかりにどの方法で解けば良いかを判断するのが思考スキルだ。公式を丸暗記する学習では、それができない。塾のテキストと同じ問題が出れば解けるが、少しでも変化球が来たら、たちまち解けなくなってしまうようでは意味がない。「なぜその公式を使って解くのか」理解できていない証拠だ。知識を覚えるときには「なぜそうなのか?」理由とともに納得して理解することが大切だ。それを疎かにして、ただ頭に詰め込んでも、応用は利かない。

一つの大きな問題は、増えていく派生論点(=枝葉)を追うことに熱心になるあまり、幹となる概念や基本問題(何が基本かは、議論があると思いますが)の理解が不十分になっている懸念があるということだと思います。

原因の一端は、増えすぎた塾の教材や(こなさなければならない)膨大な演習量にあると思うのです。

塾の教材や演習がこなせているならばそれでも良いのでしょうが、「うまく回っていないな」という状態が暫く続いているようであれば、軌道修正を行う必要があるかもしれません。

自分に合った学習スタイルへの第一歩

近年、中学入試の問題は非常に良問が多い。問題文の中に書いてある知識と、自分が持っている知識を使って、小学生なりにどう考えるかを見る問題が増えている。このような思考力を鍛える勉強を小学生のうちからしてきた子は、その後の人生においても、自分の力で考えていけるに違いない。中学受験の醍醐味(だいごみ)はそこにあると考える。

結局の所、「理解」スピードというのは個人差があるので、自分のペースでやるのが最も適切(=その点では独学最強)なのですが、いきなり「独学しなさい」などと言われても、やり方も分からないので困ってしまう。

そこを補う役目を果たすのが、学校や塾や家庭教師だったりするのだと思います。

中学、高校、大学、そして社会人へと進むにつれ、徐々に自分に合った勉強方法が身についていく。そして、その第一歩として中学受験の準備には意味があるような気がします。

 

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