毎朝楽しみに見ていたのだが、ちょっと気になるシーンがあった。65年生まれの3人目のヒロイン、川栄李奈さん演じる大月ひなたが、太平洋戦争で亡くなった祖父から受け継いだ英語辞書を使って勉強していたのだ。感慨深いシーンではあるのだが、そんな古い辞書では、もう使われなくなった表現なども覚えてしまうのでは、と少々心配になった。。
本書で紹介される新しい英語の言葉や用法で目立つのは、人種やジェンダーなどに配慮した言い換えだ。(中略)興味深いのは「they」の用法。英語の授業では、人称代名詞として使う場合「三人称複数」の「彼ら」と習うが、2010年代から、「singular they」という「三人称単数」の使い方がしばしばされるそうだ。nonbinary(性別という枠組みで自己認識をしない)の人に配慮し、heやsheの代わりに使われる。ただしbe動詞はisではなくareというから少々複雑だ。
例えば、「人には皆、意見がある」を英語で表現すると、Everyone has his or her opinions.
となります。
everyoneが単数扱いなので、それを受けて(正しくは)his or her となるわけですが、ちょっと面倒ですね。 そこで、Everyone has their opinions. となる。 これがsingular theyです。
従来文法では間違いということになるのでしょうが、こちらの用法の方が現在では主流だと思います。
そういえば、留学時代に読んだ洋書の専門書(教科書)の序文に、「ジェンダーに関する議論を避けたいので、sheに統一する」と書かれていたことも印象的でした。それほど「新しい本」ではなかった気がするのですが…。
また、言葉には流行や廃りがあるので、はやりの表現や、逆に今ではほとんど使われないものもあります。
そういえば、最近では、若い子たちがAwesomeを連発するとか…
あるいは、昔TOEFLの勉強していた時のテキスト(多分洋書)に出てきた学生同士の会話表現に、次のようなものがあったことを思い出しました。
It’s a mickey mouse course.
意味は、「それ、楽勝科目。」という感じでしょうか。
後にも先にもこの表現を耳にしたことはないので、(辞書には意味として掲載されていますが)実際にはほとんど使われていないように思います。
日本人の感覚では、人種やジェンダーに配慮した言い換えは、少々やりすぎに思えるかもしれない。言語文化の否定、表現を狭めるものと懸念する人もいるだろう。だが、言葉は常に変化するという前提に立てば、言い換えを工夫することでむしろ表現が豊かになるとも考えられる。本書を参考に、英語の変化から「世界の今」を感じとってみてほしい。
英語は、多くの日本人にとって母国語ではないので、多少意識しないと触れる機会がありません。言い換えると、国内で生活する分には日本語だけで用が足りる。
しかし、英語はnativeだけが話す特殊な言葉ではなく、現状では世界共通語です。
例えば、「日本人が中国人、韓国人、インド人、マレーシア人と英語で会議する」などということは、特に珍しくありません。元々、シンガポールや香港あたりの英語が極めて流暢な人達だけでなく、今やアジア圏でも普通に英語が使われています。
英語を勉強することは、「英語力を高める」という目的ももちろんありますが、英語を通じて世界(の常識)に触れるという意味も大きいと思います。
英語が堪能であるということだけでは、数億人はいるであろうネイティブの末席に連なるのが関の山。日本人としては、英語+アルファが必要。
世界中の文化的要素が英語の中に取り込まれつつあるという状況において、英語の世界を知ることは、国際人としての素養を高めるためにも重要だと思います。
さらに、(学んだ)英語表現も最初は意識して使うことになりますが、いずれその意識が自分の中に定着(embedded)すると、自然に口をついて出てくるようになると思います。
そういえば、最近こんなニュースがありました。
「失言」に端を発した問題ですが、悪い意味で意識が内的に定着(embedded)してしまったが故の発(失)言ともとれるかもしれません。
失言にも「相応の理由あり」ということでしょうか。