【東京出版】算数プラスワン問題集について(2)

高学年向け
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前回に引き続き、「算数プラスワン問題集」がテーマです。
今回は、私見に基づく使用上の注意点です。

はじめに

算数プラスワン問題集は個人的には非常に気に入っている(かつ、我が家もお世話になった)問題集ですが、一方、取り扱いが案外難しく(期限のある中学受験という局面では)万人向きの問題集ではないと考えます。

以下、私見によるプラスワン問題集の使用上の注意点を掲げましたが、使用にあたっては、 プロ指導者(家庭教師や個別など)の適切な指導の下で利用するのが望ましいと思います。

一方、ご家庭で進める場合には(お子さんが自力でどんどん進められる場合は別ですが)事前に親御さんが教材を研究しておく(=自分で解いておく)必要がある思います。

使用開始時期/終了予定時期

使用開始時期は、単元学習を終えた後

算数プラスワン問題集の使用にあたって注意すべきは使用(開始)時期
「本書の利用法」には、以下のように書かれています。
各分野を順に学習して、その内容を一つ一つマスターしていくことを分野別学習ということにすると、この分野別学習を一応終わらせた人が必要なのは、復習・点検です。でも、そこで、ぜひ意識してほしいのは、
   「何を使って解くのか」の見きわめ
です。この見きわめができないと、入試で苦戦するのは明らかです。
つまり、スタート時期の目安としては、塾における単元学習が一通り終わる頃ー小5の終わりか小6の初め頃ーということになります。6年生のちょうど今頃でしょうか。
もちろん、「一通り終える時期」には個人差もあり、塾のカリキュラムを先取りして、例えば小5の初め頃にすでに全単元を一通り学習し終えているようであれば、小5の頭から使用することも可能でしょう。
いずれにしても(使用開始時期としては)、全単元の学習が一通り済んでいるのが望ましいと思います(それ以外の使用時期については後述します)。

完成時期の目安

使用開始時期以上に重要なのは、完成時期です。
(最)難関校を志望する場合、入試過去問演習が本格化する10月あるいは11月には終えておきたい。
終えるというのは、「一通り終える」という意味ではなく、手をつけた部分は完ぺきに(すらすら)解ける状態までもっていくという意味です。
例えば、6年生の今頃からスタートすると(完成までの)使用期間は約半年となります。この問題集の特性(=基礎力の整備/点検)から、時期的にもピンポイントでの使用になります。
つまり、終了時期から逆算して、「今から始めて完成できるか」という点を十分検討したうえで、利用の可否を決める必要があるということです。

使用開始時期が遅れた場合

使用開始時期が多少遅くても、上記の終了時期に間に合うのであれば、問題ないと思います。
基本的に「点検」用教材なので、すらすら解ける部分が多ければ学習(点検)時間は少なくて済みます。つまり、算数プラスワン問題集を開始した時点の学習仕上がり度合によって、所要時間がかなり異なるということです。
例えば、夏休み明けにスタートしても、(その時点での学習仕上がり度が高ければ)1日1時間程度で10題~15題をこなせると思います。この場合、恐らく10月中には完ぺきに仕上がると思います。初回でこのペースで進められれば、2回転目は1日1時間の学習で10日弱、3回転目は2~3日で終わると思います。
もっとも、上記は多少極端な話で、現実的には使用開始時期のデッドラインは夏休みだと思います。
逆に言えば、それ以降に開始すると、10~11月に(すべての問題を)完ぺきな状態にすることは難しい。
その場合には、
 ① 単元を絞って学習する
 ② (プラスワンではなく)塾教材を使って点検する
   という方法が現実的だと思います。

単元学習との並行には注意が必要

繰返しになりますが算数プラスワン問題集使用開始時期の目安は、単元学習が一通り終わった後だと思います。

確かに、巻末索引(分野による検索など)を使うと、「消去算」や「仕事算」などの問題をピンポイントで選択して演習することは可能です。
そこで、塾で単元学習を行っている間に、類題演習の追加目的で本書を利用するという方法も考えられます。
しかし、個人的にはこのやり方はあまりお勧めしません
というのも、「総点検」という目的からはやや外れてしまうこと、単元学習時の類題追加目的であれば、別の教材でも可能だからです。
さらに、算数プラスワン問題集は難度的にもやや高目の問題が多いので、(基礎があまり定着していない)早い段階で始めると、1問解くのに(理解するのに)かなり手間取ってしまう懸念もあります。
すなわち、早過ぎるスタートの結果、かえって効率が悪くなってしまう恐れもあります。何事も早く始めれば良いというわけではなく、適した時期というのがあると思います。
ただ、単元学習と並行して進めたい場合には、塾や個別指導の講師あるいは家庭教師など、「その道のプロ」の指導の下で進めるのはアリだと思います。

その他の注意点

プラスワン問題集を使用しないとダメ?

現在の中学受験では、中学受験塾の教材だけでもこなしきれない量になっているので、正直なところ、「市販教材など使っている余裕がない」という状況だと思います。
また、大手塾の教材はかなり充実しているので、あえて算数プラスワン問題集を使わなくても同等の学習効果が得られる教材(あるいは塾教材の使い方)はあると思います。
いずれにしても、(使用の必要性や代替的な学習法を含めて)塾に通っている場合には、塾の先生に相談するとよいでしょう。

シンプルな解説 ➡ フォローの必要性も

算数プラスワン問題集の解説は、「大学への数学」の東京出版らしい本質的でシンプルなものになっています。
例えば、四谷大塚の「予習シリーズ」の解説(時々、不親切なものも見受けられますが…)などと比べると、かなり簡素なものです。
言い換えると、「誰にでも分かるように丁寧に書かれた解説」ではなく、「ある程度単元学習が進んでいる算数好きの諸君なら、これで分かるよね」という感じです。
もちろん、算数が好きで学力が高いお子さんは、自力で進められるわけですが、自力でドンドン進められる時点で、すでに難関校に合格できる素地があると言えます。
一方、多くのお子さんの場合、「問題を解く ➡ 解説を読む ➡ 自分で理解する」というサイクルを必ずしもすべて自分で回せるわけではないでしょう。
したがって、親御さん等によるフォローがある程度必要となります。
しかし、上述の如くシンプルな解説のため、親御さん自身が中学受験算数をある程度研究していないと、お子さんに的確に教えられない可能性もあります。
このような場合には、中学受験のプロ(個別や家庭教師)の指導を仰ぐ必要があると思います。

難関校以外の受験生には必要ないか?

「算数プラスワン問題集」の表紙には、「中堅校受験生の総整理、難関校受験生の基礎力整備に」と書かれています。
なので、必ずしも難関校受験生向けの教材と言うわけではない
ただし、大手受験塾の膨大な教材をこなして、さらに市販問題集(プラスワン問題集)をこなせる余力があるということは、かなりの上位層である証でもあるわけです。
つまり、難関校を志望する受験生でないと(プラスワン問題集は)なかなか使いこなせない、という解釈が一応成り立つと思います。
一方、(難関校狙いでなくても)算数が好き、とか、一行題中心の入試問題を課す学校などもあります。こうした場合には、過去問演習までに終わらせなくても、過去問演習と並行してプラスワン問題集を利用するという選択肢もあると思います。

一部分の使用も有効

さらに言うと、問題集全部を完ぺきにこなさなくても、「手をつけた部分は完ぺきにする」という使い方もあります。
例えば、「志望校の入試問題には平面図形がよく出題されるから、平面図形に絞って点検しよう」とか、「規則性が弱いから、そこだけ重点的に強化しよう」いった具合です。
全部を中途半端にやるくらいなら、たとえ20問でも30問でも完ぺきにできるようにした方がはるかに良いと思います。

使い方に注意は必要だが、工夫次第で色々な使い方が考えられる

算数プラスワン問題集はそんな問題集だと思います。

 

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