中学受験の偏差値は入試問題の難しさと関係ない 安浪京子&矢萩邦彦が語る偏差値の「誤解」

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思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。今回は、「偏差値」に関する相談にお二人が答えます。

 

安浪:まず知っておいてほしいのは、そもそも偏差値って大手塾が作っているものがほとんど、ということですね。だから同じ学校でも塾によって偏差値が変わってきます。
矢萩:そうです。偏差値って結局は母集団の中で自分がどれぐらいの位置にいるかを表した数値でしかない。偏差値50なら、その集団の中でだいたい真ん中にいる、ということです。

偏差値は、母集団が正規部分布していると仮定して、(その試験を受けた)母集団の中での(自分の)位置を数値化したものですね。

大手塾では塾生向けの模試(試験)を実施しているので、偏差値は塾の中での相対的な位置や学習内容の定着度合いなどの判断材料になります。また、入塾後の偏差値が上昇傾向にあれば、学力が(塾生の中で)相対的に伸びていると判断できるでしょう。

ただ、偏差値は(実力に変化がなくても)かなり変動します。また、偏差値の高低で入試結果が決まるのではなく、あくまで当日の試験の結果で勝負が決まりますので、あまり神経質になることは避けたいですね。

安浪:質問者さんのように地方ご出身で、高校受験しか経験のない方が勘違いしがちなことは、中学受験の偏差値を高校受験の偏差値のように見てしまうこと。中学受験って小学生のトップ層が競争している世界で、とてもハイレベルなんですよね。高校入試や大学入試と同じ問題が出題されることも珍しくありません。だから中学受験での偏差値50が高校受験での60に該当したりします

矢萩:それはありますね。あと勘違いとしては、偏差値が高い学校ほど難しい問題を出す、と思われていることかな。

「中学受験の盛んな地域で中学受験を目指して大手塾に通う小学生の母集団」と、「同じ地域で(公立中学に通う)高校受験を目指す母集団」とではまったく違います。

また、学校の難度と入試問題の難度はおおむね比例しているとはいえ、①年度毎に難易度の差がかなりあったり、②難度を抑えて問題量を増やすという方向性をとる学校もあることから、必ずしも両者が連動するとは言えません。

安浪:まさに! 偏差値と問題の難しさ、って必ずしも連動していないですね。例えば、慶應中等部は同じ偏差値帯の学校と比べると問題の難易度はそれほど高くない。でも、大学附属、慶應ブランド、そして特に女子は募集人数がとても少なく倍率が高いことから、偏差値が跳ね上がります。よって、女子はすさまじい高得点勝負になります。

こうした学校の場合、結果的に、(同じ偏差値であっても)処理が速くミスをしにくいお子さんが有利となると思います。

 

安浪:だから入試問題との相性が大切という話になりますよね。ただ、算数の場合、大手塾偏差値45の子を50か55ぐらいにはもっていけるけれど、55の子を60にもっていくのはすごく難しくなります。(中略)問題の性質がガラッと変わるんですね。慶應中等部は例外ですが、算数の入試問題に関しては、偏差値が上がるほど思考題が増えてくる傾向にあります。

中学受験においては、模試の前半から中盤に出てくるような計算問題、典型的な一行題、定番総合問題あたりまでできれば、偏差値60位までは行きますね。

これには、「ノーミス」という条件が付くので、多少のミスをするとして偏差値55位になるという感じですね。

ところが、ここから偏差値を上げるのはかなり大変です。というのも、この先は正答率がやや低目の問題に正解する必要があるからです。

言い換えると、ここから先は勉強時間に比例して偏差値が伸びるとは限らない領域ということになります。

例えば、

① 後半の難問は捨てて、50分の試験時間で標準問題まで完璧にした偏差値55
② 標準問題まで30分で終え、残り20分を後半の問題に使ったが、正解できなかった偏差値55

では相当の実力差があるわけですが、それが表面上の偏差値の差として表れないわけです
55→60、そして60→65と偏差値を上げるのが段々難しくなるのは、勉強時間と点数アップが比例しなくなってくるためと考えられます。

直線型ではなく、「階段型」というか、ある臨界点を超えると急激に伸びるという感覚と思います。

 

安浪:矢萩さんは偏差値をどう利用すべきだと思いますか?

矢萩:モチベーション管理でしょうね。偏差値を見ることで「次はこれを目指そう」というモチベーションになるなら使うべきだと思う。逆にモチベーションが下がってしまうような子なら、「解きたかったのに解けなかった」と本人が言っている問題だけを解き直しさせて、成績表の偏差値が書いてある部分を切り取ってしまうこともありますよ。目標は行きたい学校、相性のいい学校に進学することですからね。

子供に対して、偏差値でモチベーションを上げるというのはなかなか難しそうですね。

そもそも、子供は偏差値が何なのか分からないでしょうから。順位とか点数といった指標の方が、理解しやすいかもしれませんね。

 

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