本日はこちらの記事です。
中学入試で英語を導入する学校が増えています。2021年度の首都圏の中学校入試では、帰国生入試以外での英語試験を何らかの形で導入している学校は143校(国立1校、私立142校)。
英語試験を組み込む私立中学校 この7年で10倍近く増加
英語試験を導入する一貫校が増えているようです。
理由はいくつか考えられますが、小学校で英語教育が正式科目として導入されたこともその一因でしょう。より正確には「正式導入を見越して」ということだと思いますが…。
正規授業では週に2時間ほど、担任とALT(Assistant Language Teacher)の2人組で授業が展開されるようなので、週1~2回英会話教室に通っている感じでしょうか。
また、低学年でも(正規の授業ではありませんが)、週1程度のペースでネイティブ講師の英語の授業が行われていたりします。
ということで、今の子供達は(公立)小学校時代から普通に英語に触れる環境が用意されていると言えます。これは我々が子供時代とは大きく異なる点です。
英語入試導入にはいくつもの問題点がある
わたし(注:中学受験専門塾「スタジオキャンパス」を運営する矢野耕平氏)は、中学受験専門塾の経営者として、また、指導者として、長年中学入試の世界に携わっているが、この中学入試における英語試験導入はいくつもの問題点をはらんでいるのではないかと考えている。
矢野氏の指摘する問題点は以下の3つです。
(2) 中学入試の「英語試験」のレベルが高すぎる
(3)英語試験の入学生に配慮したカリキュラムが構築されていない
現状の4科目入試についても、受験生の負担という点では問題があると思います。何しろ、出題される範囲はどんどん増えて、問題も難化していますので。
ただ、「首都圏の多くの中学校が4科目入試」という実情から、改めて負担感を問う声は意外に少ない。
すべての学校とは言わないが、英語試験を導入する学校の中には、4科目試験を経て入学してきた生徒たちと、英語試験を経た生徒たちが同一カリキュラムで中学校の学習を進めるところがある。英語試験導入を単なる「集客材料」とするような学校に多く見受けられるように感じている。高いレベルの英語試験を課して、それをパスしたのであれば、この生徒たちには特別なカリキュラムを用意すべきではないか。多数の「4科目試験入学生」に合わせて、英語の初級レベルの学習からスタートするのは 苦痛にならないのだろうか。
この点がなかなか難しい所ですね。
例えば、帰国子女枠がある学校であれば、英語授業は別体系になるはずです。
果たしてこれで問題は解決するでしょうか。
一口に帰国子女といっても、英検1級レベルから3級位まで差があります。そもそも英検1級レベルなら(その力を維持すれば)大学入試程度の英語であれば楽勝のはずです。
一方、(海外生活が長く)日本語運用能力も怪しいレベルの生徒もいるわけで、そうなると英語以外の通常の授業の方が大きな負担になるという面もあります。
4科目(2科目)入試という同じ試験を受けて入学してきた生徒だけを対象とする教育でもそれなりに大変なのに、異なる入試制度により、バックグラウンド(学力面のばらつきも含めて)が極端に異なる生徒が入ってくると、集団教育というのは非常に難しくなる。
様々な入試スタイルを用意し、様々なバックグラウンドの生徒を集め、少人数コースで各人の学力を伸ばしていくことができれば、まさに「理想的な教育」といえますが、学校側もリソースも限られ、かつ、ノウハウがまだ固まっていない中での理想の実現は難しい。
したがって、入学する生徒の特性に合わせた受け入れ側である学校の体制が相当程度整っていないと、単なる生徒集めの手段だけになってしまい、教育面での歪が生じかねません。
これは何も英語に限った話でなく、数学や理科など他科目にも同じことが言えるわけで、最終的には学校側の「個別対応力」ということになるのかもしれません。
学校(教師)側にどれだけ個別対応の用意があるかを事前予測するのは難しいですが、志望校を見極める上では重要な要素になるかもしれません。
そもそも、小学校における英語教育導入自体に多くの問題点が潜んでいるのではないか、とわたしは考える。(中略)わたしの抱いた危惧に迫田氏(注:約13万5000人の登録者数を誇るYouTubeチャンネル「数学・英語のトリセツ!」を運営する迫田昂輝氏)はこう返した。「4科目受験生が英語学習に取り組むことになると、確かにその負担はかなり大きくなるでしょう。ただし、現時点で英語を含めた5科目の入試を課す学校はさほど多くありません。(中略)「中学入試で出題される英語試験の難しさについて批判するのはナンセンスだと感じます。算数だって国語、理科、社会だって、中学入試で課される内容は小学校の学習では太刀打ちできないものでしょう」
「英語が悪者扱い」されるケースが多いですが、「二兎(4科目+英語の5兎?)を追うことによる負担」がその前提にあるように思います。
そもそも、あらゆるタイプの入試に対応しようという発想が無理ということだと思います。
「あれもこれも」ではなく、「あれかこれか」に絞って受験戦略を練る必要があるということではないでしょうか。もちろん、5兎も6兎も追える能力があれば別ですが…。
その意味でも、早目の志望校選びが重要と言えるかもしれません。
それでも、ある1点においては迫田氏もわたしと同様のことを問題視している。「確かに4科目試験で入ってきた子と英語試験で入学した子を中学校で同じカリキュラムにするのは良くないですね。せっかく英語試験を導入するのだから、英語を得意とする子が入学直後からさらに深く学べるように内部の体制を整えるべきでしょう」
学校側の受け入れ態勢の整備の重要性がここでも指摘されています。
来春から中学入試で「英語必須」! 江戸川学園取手の思い
来春の2022年度入試から大胆な「入試改革」に踏み切る中学校がある。茨城県取手市にある共学の私立進学校・江戸川学園取手中学校だ。なんと、すべての入試回において「英語」を入試科目に含めたのである。(中略)「英語を入試に導入するといっても、20分のリスニングだけであり、検定教科書レベルを逸脱したものではありません。『英語なんて中学受験に関係ないよ』とその小学校の学習をおろそかにしてはいけませんし、中学入学後もひとつひとつの授業を大切に臨んでほしいという思いがあります」。
こちらはまだ珍しいと思われる5教科入試の学校です。こうしたトレンドが広がるかどうか、今後に注目したいです。
小学校の検定教科書レベルということなので、英語能力を測るというよりも、「学校の授業を大切にする姿勢」を見ている感じでしょうか。
現在の主流の選抜方式である4教科型が今後とも主流であることには変わりはないと思いますが、AIの活用なども含めて個別対応力を強めてくる中学・高校が出てくると、将来的には状況が変わってくるかもしれません。