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受験のプロである塾に頼りすぎることで起きる弊害もある。受験のイニシアチブは“親”が握ることが、幸せな受験に重要な要素なのだ。
中学受験の主役はあくまでも子供とそのご家庭ですから、「主導権」(イニシアチブ)はご家庭で掌握する必要があります。
ただ、中学受験における塾の存在は非常に大きくなっているので、気をつけないと主客逆転してしまう危険性があります。
いつの間にか塾に握られる志望校選択の主導権
中学を受験するほとんどの家庭では、子どもを塾に通わせることが大前提となっている。とくに首都圏においては、人気の塾の場合、わざわざ低学年から通わせる家庭もある。こうした塾は、受験勉強の指導はもちろんのこと、実際に通っている生徒からの情報や、プロならではの知見や視野の広い情報を聞けるので、大きなメリットがあることは間違いないだろう。しかし、いつの間にか塾に志望校選択のイニシアチブを握られてしまうという危うさもある。
多くの中学受験塾では、御三家と呼ばれる名門伝統校を筆頭に、より偏差値や知名度の高い学校に合格することに価値を置く傾向が強い。まるで営業成績のように「○○中学○人合格!」と掲げる塾では、合格者実績を優先するバイアスが働き、子どもを名の知れた学校に1人でも多く合格させることが講師陣の指名(×)(使命:〇)になっているケースが多々見られる。これは、翌年の生徒の入塾者数に大きく影響があるからだ。
多くの受験塾にとって、進学実績を上げることが経営上大きなインパクトを持ちます。
とりわけ、御三家等の難関校の合格実績は大きな宣伝効果が期待できるので、将来の生徒数の確保に影響します。
また、「塾内での位置づけ」や「志望校への距離」を測る指標として偏差値が用いられ、かつ、偏差値が算出されるテストが頻繁にあることから、事実上、偏差値による中学校の格付けが行われる状況になっています。
こうした環境に3年(新4年からの通塾の場合)もいれば、「偏差値による格付け」に支配されてしまうのも無理からぬ話であり、通塾時期がさらに早まればその傾向はさらに強くなってしまいます。
ところが、中学受験塾では「より偏差値の高い学校に合格することを良しとする風潮」があるため、子どもやその保護者にもこの偏差値表を軸に学校選びをするように勧めてくる。保護者としても、数値として表される偏差値表は分かりやすいため、長らく学校選びの主軸となってきた。偏差値とは、あくまでその子本人の学力がどの程度かを測るための指標であって、決してその学校の教育レベルを表すものではない。
誰のための中学受験かに立ち返る
中学受験のスタイルは多様化している。もちろん、塾に入れること自体は悪いことではなく、多くのメリットもある。しかし塾はあくまでもアドバイスを受ける場所であって、中学受験の全てを委ねてはならない。イニシアチブを家庭が放棄すれば、学校が合わなかったときの後悔の念はより大きくなる。塾の価値観や世間の評判に縛られた状態で学校を見てしまうと、視野も狭くなりがちだ。受験勉強を始めた結果、予想より学力が伸びた場合であっても有名校に目を向けすぎてはいけない。
子供を塾に通わせているご家庭は、自分の子供が塾で一生懸命頑張っている姿を見れば、「成績を上げて、少しでも良い学校へ」という意識になるのは当然であり、それが悪いこととは思いません。
ただ、(難関校合格実績が欲しい)塾の論理や周囲の雰囲気に過度に振り回され、「ご家庭としての判断基準」を放棄してしまうことは危険だと思います。
「〇〇中学に是非受かりたい」という夢・希望は必要ですが、中学校を偏差値という単一指標のみで捉えてしまうと、「〇〇中学に合格したら勝ち組(落ちたら負け組)」とか、「偏差値〇〇以下の学校には…」みたいな偏った思考に陥る危険性があります。
とにもかくにも意識すべきは、子ども自身が幸せに学校生活を送れるかどうかだ。世間や塾で良いとされている学校や、親が気に入った学校が、子どもに合うとは限らない。小学生というまだ子どもの時期だからこそ、志望校でいきいきと学んでいるイメージを描けるかどうかを大切にしてほしい。