夫婦間の「中学受験クライシス」を生む「四つの段階」

受験生の親
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本書を描いて見えたものについておおたさんに寄せていただいた前編では、そこに描かれた3組の夫婦について分析いただいた。後編では、中学受験を機に「違い」が明らかになっていく「四つの段階」についてお伝えする。

 

第一段階 中学受験をするかしないかの意見の相違
第二段階 中学受験の目的や目標をどこに置くのかの相違
第三段階 どこまでリソースをつぎ込むのか(準備費用)の相違
第四段階 親がどこまで関わるべきかに関する相違

確かに、夫婦間で上記4つの点で相違が発生するケースは多いと思います。
第1段階の典型例は、「地方出身の夫と首都圏出身の妻」という環境の差から生じる相違です。

第2段階は、大学附属か進学校か、是が非でも難関校を目指すのか、あるいは、(校風重視で)子供が無理せずに行けそうな学校を選ぶのか、という問題でしょうか。

第3段階は、端的には「どこまで課金するか」です。教育費はまさに青天井なので(かけようと思えば)いくらでもかかってしまうものです。大まかな予算(上限)を設定しておかないと、最悪家計が破綻するリスクがあります。

第4段階は、親がどこまで関わるか、という問題です。
最初から勉強に一切かかわらないというケースは少ないと思いますが、さすがに小6あたりになると勉強が難しくなり、子供も反抗期に入ったりするので、勉強を教えるのもなかなか難しくなります。
また、親自身の仕事や家事も忙しかったりするので、つきっきりで指導することは難しくなると思います。

夫婦のタイプが違うと、「もっと勉強を見てやればいいのに」とか「そんなに叱らなくてもいいのに」などと、お互いに違和感を覚える。実はここでのすれ違いが夫婦の信頼関係にひびを入れることが最も多い。(中略)ただし、夫婦のタイプは違って当然。それを一致させる必要もない。もし夫婦の考え方や子どもへのかかわり方が完全に一致していたら、中学受験における様々な試練に対応する方法が、その夫婦には一通しかないことになる。でももし、夫婦の考え方やスタンスが違えば、少なくとも二種類の対処方法があることになる。

これはなかなか面白い視点ですね。
夫婦の考え方が完全に一致するというのは一見望ましいように思えますが、「極端に走ってしまう」、「(子供に合っていない)間違った方向に舵を切ってしまう」リスクもあります。

考えてみると、夫婦で同じく子供を見ていても、「同じ視線」で見ているとは考えにくいわけです。
父親・母親も人間なので、様々なバイアスがかかっている状態で子供を見ています

親であれば、将来子供にとって「良かれ」と思う道を進ませたいと願うものですが、その親の思い自体も、自身の経験や信条に基づく「バイアス」の影響を受けています。

中学受験について夫婦間で十分な話し合いを通じて、お互いの考え方に「違い」があることを認識し、「違い」がある中でどのように子供の中学受験に向き合っていくのか。こうしたプロセスを通じて、夫婦の絆が強くなるのかもしれません。

また、「父親の考える道」、「母親の考える道」の違いを昇華することができれば、「第三の道」が生まれるかもしれません。